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2009年11月20日(金)

遠い目の女は夜の匂い 

「最近の若い社員は使えなくてねえ。自分で考えて動こうとしないんだから。こないだもあんまりひどかったから、『お前は一般職の女のコか!』って怒鳴っちゃったよ」
「ニートだとか、フリーターだとかホントたるんでるよな。まあでも、彼らもかわいそうなのかもしれないね。母親の教育が悪いんだよなあ」

 女性に主体的に思考し行動する能力はなく、若者は「女のコのように」劣化していて(つまりこの人にとって、次世代を担うべき「若者」とは「若い男」のことであるのだ)、子が「問題」を起こすのはひとえに母親の責任である。
 目の前でこう言い放った年配の男は、しかし手弁当に近いような条件でひきこもり支援のNPOで活動し、私生活においても困窮した母子家庭に長年、援助し続けているような人物でもある。正義感が強く、尊敬すべき活動をしている人が、しかし、一皮むくと何の変哲もないセクシストで俗流若者論者であった。偏見かもしれないが、ある世代以上の男性と接すると、こういった事例によく遭遇する。
 いったい、彼をどう評価していいものか。わからなくなってしまったあたしは、「そっかぁ、大変ですねえ」とか何とか、適当なことを言いながら中身の少なくなったグラスに新しい氷を注ぎ足した。

【More・・・】

 たぶん、彼の中にはなにも、矛盾はないのだろう。弱く、能力のない女性であるから、夫たる男性の支えがなければ貧窮してしまうのは当たり前だ。だから、自分は力ある男性として彼女を守らなければならない。「母親」という女の不始末で、果たすべき役割を果たしきれないように人格形成されてしまった若い男性たちに対しては、人生の先輩としてあるべき像を示し、更生を促し支えてやらねばならない。マチズモとジェンダー・バイアスという、あたしから見れば許しがたい一貫性によって、彼の行動は貫かれている。
 あたしはたいへん根気がなく、口ばっかりですぐへこたれてしまうどうしようもない人間であるが、近い将来必ず訪れるであろう、何をする気もなくなって「もうどーにでもなれ」と床に座り込む日にも、彼のようなひとは現れるのだろうか。なにも考えなくていい、任せておけ。「女のコ」なんだから、とそう言って。
 だとするならば、あたしにとって「自由に生きる」とは、両手を大きく広げて立ちふさがる優しきパターナリストの背中を、それでもありったけの気力をかきあつめて蹴とばしてやる、ということなのだ。ならば、いつもどこかにぶつかったり、何もないところで転んだりしているくせに、あたしがかかとの高い靴ばかり好んではくことにも、意味はあるのだろう。

「深海魚ちゃんって、酔っ払ってくると色っぽーい目で遠くを見てるよね。『抱いてv』って感じの!」
「へ?そうですか?」
「そうよ。こないだもお客さんに『あのコいないのか』って訊かれてね。『ああ、あの赤ちゃんみたいなカオしたコですか』って返したらね、『あれ赤ちゃんじゃねえよ、やり手だよ』だって」

 はあ、左様でございますか。ご好評でうれしいかぎりですが、その割にさっぱりモテないのは何でですかね。
 ママにほめられたところで、そんな性格のひんまがった答えしか返しようがないのだが。色っぽく遠い目をした夜のオンナは、実は意外とこんなことを考えていたりする。

 ちなみに、いつもの喧嘩っ早さにくらべてずいぶん優しい対応をしているのは、単にそうするのが深海魚の仕事だからである。「テメェぶっ殺したろうか」と胸倉つかみたくなるほどのいら立ちは、時給ウン千円という金銭を介することで、「長寿社会の恩恵がこのひとの頭上にだけは訪れませんように」とひそかにお祈り申し上げながら酒のおかわりをつくってやれる程度にソフィスティケートされる。
 逆にいえば、バカ話を笑顔でききながしてやるのは時給ウン千円に値する労働であると、あたしはすでに学んでしまっているワケだ。一年ちかく勤めていると金銭感覚もいいかげんぶっ壊れてきて、最近ではもう一つくらいゼロが多くてもいいんじゃなかろうか、という気さえしはじめている。プライベートで、金さえ払わずにこんな「労働」を要求してくる輩にあたしがどんな態度をとるか、推して知るべし、である。
 それにしても、「女に難しいことはわからん」を信条にしているような人間が、あたしという若い女にむかって楽しげに話をしてくるのは、いったいどういうことなんですかね。どうせ言ってもわからんだろうと思いながらしゃべってんのか、それともあたしは女じゃないとでもいいたいのか。あなた方が思っているよりゃ難しいこともわかるつもりだが、あなた方の心理だけは永遠のミステリーだわ。

↓深海魚の心理の方がミステリーだと思うあなたはコチラ
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テーマ : お水な夜仕事 - ジャンル : 就職・お仕事

タグ : ジェンダー カンパイワーク ひとりごと

【編集】 |  14:57 |  日常  | TB(0)  | CM(5) | Top↑

Comment

まあ、そういうおっさんに関して、思うところはいろいろですが、結局とどのつまりお仕事お疲れさまですv-222
えびさわ |  2009.11.21(土) 12:00 | URL |  【編集】
●どーも
ありがとー。頑張ります。
えびさわ君もいろいろ頑張れよー。
深海魚 |  2009.11.21(土) 23:05 | URL |  【編集】
初めてお邪魔します!
「まりあ」でここに来ちゃいました。

で、トップに上がってタイトルとは関係のない書き込み失礼します。

森友嵐士の復活にあたって、どうしても無視出来ない気持ちが強くなり「まりあ」の事を知りたくなりました。

俺ほとんど知らなくて…。
(会) |  2009.11.24(火) 06:27 | URL |  【編集】
「『一般職の』女のコか」とわざわざ一般職を付けているのは,総合職の女の子なら別の見方をするからなのか,単に女の子と言えば一般職という偏見で言っているのか,微妙な感じもしますがきっと後者でしょうね.

ある一定以上の年齢の「おっさん」は「思ったことを臆面も無く口にする」「男女差別が云々言う教育を受けてない」世代というだけじゃないですかね.
基本的な認識って,今の世代になってもそこまで大きく変化してない気が.
それに「一般職の女の子」という概念に該当するような存在は,実際にあるし,それは会社によって故意に作られています.
差別意識とはまた別に,社会に出ると社内で扱いの違う人間に対する恨み節というのが,どうしても強くなる.
会社の為に粉骨砕身して安月給の人と,鼻ほじりながら世間話をして定時で帰って高給取りの人が同じ場所にいるのでは…

化学系だと普通に総合職で技術をやる女性が多いんで,扱いが男性と変わりません.男女共同参画なんかで注目されたなんて話は聞かないですが,扱いの実態を見ると男女平等が相当進んだ部門です.就職も女性だからといって殆ど不利にはならないし,当人達も不利になる要素を捨てている.
汚れ仕事もやるし,力仕事もやる.試薬で汚れ,臭いがつき,実験に伴う危険があるため,飾らないし余計なものは何もつけない.有機系ともなると泊まり込みでやつれている.
現状で総合職技術系で行くなら,この状態に成るのは必然だし「女の子なのに可哀想」みたいな考えは大学生のうちに消えちゃうわけですが,これじゃお互い魅力を感じないよな と思ったり.
まぁオフの時に合うとちゃんと化粧してたりして逆にギャップにほれたりするかも知れないですが,残念な事に理系男子の大半はオフでも同じ格好.

まぁ仕事って大変ですよねって話ですね.
玉響 |  2009.11.24(火) 08:41 | URL |  【編集】
●遅いレスで失礼します
>(会)サマ
はじめまして。
まりあさんのことを書いたのはかなり昔で、しかもほとんど情報量のない記事だったので、それから何年経っても彼女の名前で検索して来られる方がいることに驚かされます。よほど、人を引き寄せる魅力のある方だったのでしょうね。

もうご存知かもしれませんが、ご本人のウェブサイト「死にたい症候群」(ttp://whiz-bang.tripod.com/)をのぞいてみるのはいかがでしょうか。
『明日、自殺しませんか ― 男女七人ネット心中』という本もあります。(ttp://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4344409086/tonighsfriedf-22/ref=nosim/)
まりあさんが自殺を考えていたころ、出会ったノンフィクションライターさんによるルポです。以前は新紀元社から単行本が出ていましたが、それが文庫化されたようです。内容の変更点などは確かめていませんが。

以前はYahoo!ブリーフケースで有志の方が楽曲を公開されていたのですが…それはどうも、削除されちゃったみたいですね。
昔の記事で紹介済みのことばかりですみません。私にも、それ以上の情報がないもので…お役に立てなくて申し訳ないです。

>玉響サマ
明らかに後者でしたね。そもそも女性総合職がいて、将来管理的な立場に昇進していく、という想定がはじめからないようでした。

>ある一定以上の年齢の「おっさん」は「思ったことを臆面も無く口にする」「男女差別が云々言う教育を受けてない」世代というだけじゃないですかね.
基本的な認識って,今の世代になってもそこまで大きく変化してない気が.

うん…少しずつ変わっていっているとは思うのですが、まだまだ残っているのも確かですね。
彼がああいうことを平気で言ったのは、世代だけでなく場面的な理由もあったのだろう、と思います。擬似恋愛を演じる場で、「いかにも」な男性としてふるまう必要性を感じたのだろうと。会社内のように、女性社員の目を気にする必要もありませんし。
だとすれば、性差別をあからさまには口にしない若い人のそういう面を表に出してしまうのは、プライベートな場、特に恋愛関係においてではないかと思って、「背中を蹴とばす」云々とかきました。その辺、文中でちゃんと説明できてませんが。ヒールは、移動速度とHP上限値を犠牲にして攻撃力(キック)を上昇させる捨て身の武装なのだ(違)

職場に「一般職の女の子」的な働き方をする人がいるのは構わないのです。全ての人にとって、才能や主体性を発揮する場が仕事でなければいけないとは、もちろん思いません。ただ、そういう仕事の仕方を要求されているから(仕事以前に、生育暦においても、かもしれませんが)自分で動かない、というのが「女の子だから動かない」と誤認され、よりいっそう「女の子」にそういう仕事が割り振られるようになり、それを見てさらに偏見が強まる…という負のスパイラルが気持ち悪くてしかたありません。つーか、どうせそういう風にしか見られないと分かってたら、そりゃ動く気もしなくなるってもんです。
しかも、「気遣い」は求められるのにそれを主体性としては評価されない、という。一方で、「釣りバカ日誌」や「美味しんぼ」の主人公は、仕事に消極的でも「自分から動く能力がない」とは見なされません。
もちろん中には私のように、絵に描いたような「自分から動かないヤツ」もいますが、一般の女性をそんなのと一緒にするのはあまりにも失礼ってもんです(笑)
あと、余談ですが。一般職はスタートの時点で技術職より待遇がいいのかもしれませんが、早い段階で昇給が止まり肩たたきに遭うので、必ずしも「楽して高給取り」ではないですよ。

うーん、化学系技術職で女性が不利にならないというのは素晴らしいと思いますが、そのために「女性的」とされる要素をそぎ落とさなければならないのなら、それは本当に「平等」なのでしょうか。男性のスタンダードに合わせなければやりにくいように「その仕事」が作られてしまっているのは、問題なのではないかと思います。
それに加えて「女装」しない女性は魅力がないとなれば(服装の面においては、男性にはこの縛りはゆるいと思います。言動面はともかく)、彼女たちは「女か、仕事か」という二者択一を迫られることになります。結婚や子育てを機に仕事をやめる/減らすか否か、という選択が往々にして女性のみに押し付けられている問題と、これは一体なのではないでしょうか。その延長線上に、「すべて完璧でいなければ」と自身をさいなむスーパーウーマン幻想が現れる気がしています。
「女装」しない女性や「男装」しない男性に魅力を感じない、というのもね。私たちにとっての性的魅力って、一体どうやって構成されているんでしょう。

>まぁ仕事って大変ですよねって話ですね.
ホントにね。
そろそろ将来を見据えなければならない学生としては、ビビりまくりです(笑)
深海魚 |  2009.12.03(木) 04:20 | URL |  【編集】

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