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2009年03月13日(金)

私は小5だった 

カルデロンさん一家のこと。
e-politics - 外国人政策/カルデロン一家問題
フィリピン人中学生、ひとりで日本残留 両親は4月帰国へ - MSN産経ニュース (魚拓

この件にはじめて触れたときの正直な感想は「気の毒だけど、どうにもならないよなあ」だった。もちろん、かれらや支援者が求めていた措置は法の枠組み内のもので、一家全員に在留特別許可を出したところで何ら「法を枉げる」ことになどならない。それは当たり前の前提とした上で、しかし今までの例を考えると難しいケースだろう、と端からあきらめモードだった。
けれど、特に娘さんの置かれた状態を自分にひきつけて想像してみたら、だんだん落ち着いていられなくなった。それで今度は、「冷静じゃない」ことを理由に、発言もせず関連記事へのブックマークすらしないで逃げてきた。先刻、Eメールでも署名ができることに気づいて嘆願書だけは出してきたけど、たぶん遅すぎて自己満足にしかなっていないだろう。なんだって、あたしはこうも腰が重いんだ、畜生。
話がずれた。自分に冷却期間をおいて冷静に考えた結果、今回のケースで「冷静」に物分りよく沈黙してみせたところで一片の価値もないことがよくわかったので、冷静さを欠いたまま書くことにする。

現在の入管では、一家全員に在留資格のない家族に、全員分の在留特別許可を与えるには、子どもが中学生以上になっていて、「母国」になじむのが難しいとされるのが基準となっているようだ。カルデロンさんの場合は、長女のノリコさんが判定当時小5だったため、これに当てはまらないとされた、という。
このことを知って、決定的に頭に血が上った。

【More・・・】

あの時、あたしは小5だった。「中国人」なのだから、他の中国人の中で漢語*1 を学んできなさいと親戚の暮らす天津に送られ、現地の小学校に編入した。知らないうちにすべてが決まっていて、有無を言わせない、という感じだった。

何日もしないうちに、学校は休みがちになった。朝、登校時間が近づくたびにものすごい吐き気に襲われて、胃の中身が空っぽになるまで吐いた。最初は何が起こっているのか、自分でもわからなかった。何か恐ろしい病気にかかったのかと思って、病院をいくつも回った。そのうちに、「学校」という単語を聞いただけで勝手に涙が出てくるようになって、毎日ばかみたいに泣き叫んだ。
「昼間なのに、この子はどうして学校にも行かずに街にいるんだろう」と思われるのが怖くて、外に出られなくなった。両親から国際電話がかかってきても、担任教師が家まで訪ねてきても拒絶した。しまいに、現実と妄想の境目がよくわからなくなった。従姉に「そんなに日本に帰りたいなら、電話線を伝っていけばつながってるかもよ」とからかわれ、「なるほど、そうすればよかったんだ!」と本気で電柱を登ろうとして、止められた。
日本で暇つぶしに読んでいたハンディ版 家庭の医学の「登校拒否」のページを思い出して、やっと自分の身に起きていることを理解したけれど、お世話になっている親戚の手前、期待している両親の手前、そして何より自分自身のプライドが邪魔して、誰にも言えなかった。

それでもあたしは、ある程度漢語ができた。*2 お世話になっていた家とは昔から交流があったし、現地には友人もいた。何より日本での生活基盤は経済的にも法的にもしっかりしていた。中国に送られたのは期限つきで、いざとなれば日本に逃げ帰ればよかった。というか、最終的には結局そうした。なのに、ノリコさんはこうした条件すらないままの「帰国」か、両親と引き離されひとり親戚の家に身を寄せて暮らすか、*3 という選択をせまられたのだ。それがどんなに厳しいものか、想像しただけで、胃液さえ出なくなっても吐きつづけたあの日の感覚が、よみがえってくる。
まあ、我ながら極端な例ではあるだろう。こんな貧弱で、適応能力ゼロでクズみたいなガキと一緒にされたら、ノリコさんに失礼かもしれない。けれど、在日2世(だけに限らないだろうが)にとって、「母国」に「帰国」させられ、同化を求められることは、多かれ少なかれ「私はもはや『母国』の人じゃない」と思い知らされることを意味してしまう。あるいは、子どもを人に預けることが悪いとはあたしはちっとも思わないけれど、お互いに望まないまま無理やり引き離されるのが、いいことであるわけがない。
「フィリピンに帰ってもらうだけだ」とか、「日本におじさんおばさんがいるんだから大丈夫」とか、さも冷静そうな顔をして言う人たちは、なんなんだろうと思う。そこで行われていることが残酷であるとせめて知れ。冷静な思考は、誰かを守り支えるために用いるものだ。状況の残酷さを、そして自分もそこに加担していることを*4 ごまかすための「冷静さ」などに、あたしは一切の価値を認めない。
少なくともあたしは、「母国」になじめなかった。あたしは小5だった!

いくらゴネたところで入管が決定を撤回するとは考えにくいのだから、早くあきらめて「帰国」後の生活準備や再入国の可能性を探すことに時間を使うべきだった、という人がいる。あるいは、同じような境遇で人知れず強制送還されていく人たちはたくさんいるのだから、カルデロンさん一家だけを助けても根本的な解決にならないという人がいる。
冗談じゃない。
こうやって表に出て運動しなければ、ノリコさんが日本に残れることもなく、誰に知られることもなく3人そろって日本から追い出されていただけのことだろう。今回得られた、まったく不十分な譲歩さえ、なくなっていたのだ。困っているのはカルデロンさんたちだけじゃないというのなら、次の人も、また次の人も、そのまた次の人も、助ければいいというだけの話だ。誰もがかけがえのないその人である以上、ひとりでもふたりでも、助けることに意味はある。根本的な解決のためには、日本の外国人政策を抜本的に変える必要がある、というのには全面的に賛同する。けれどそのことと、個別の支援はまったく矛盾しない。むしろ、個々の事例を積み上げることが、その人たちが積み上げてきたそれぞれの生活が現にあることこそが、大きな枠組みの変更を支える根拠になるはずだ。

ご両親が娘さんを表に出したことを、子どもを盾に取っている、あまりに弱い、と評する人もいる。あたしの身近なところでも聞いた。その人が決してバカじゃないことはよく知っているので、どうしてそういう発想になってしまうのかさっぱりわからない。
ハードな争いに子どもを巻き込むべきじゃない。一般論として、それは正しいだろう。けれど、今回の場合、彼女はすでに強制退去手続きに巻き込まれていた。というか、入管に何度も出頭させられてる時点で十二分に教育に悪い。あれは、とても嫌なところだ。ご両親がいくら巻き込まないようにしようとしても、処分が覆らないかぎり彼女の生活は壊される。彼女を巻き込んだのは、家族でも支援者でもなくて、行政だ。そんな状況下で、子どもが自分の権利を守るために闘いに乗り出して何が悪い。メディアに露出して、戦略的に発言して何が悪い。「子どもをダシにするな」と彼女や、ご両親や支援者を沈黙させようとするのなら、盾に取ってるのは、どっちだ。
思うに、「強さ」とはスカラーじゃなくて、ベクトルのようなものなのだ。起点があって、方向があってそして大きさがある。子どもを外野の好奇心にさらさず、粛々と処分を受け入れるのも、子どもとの生活をまもるためにあらゆる手段で戦い抜くのも、どっちも強くなきゃできないことだ。かれらは、「存在すべきでないもの」として追い詰められたがゆえに、強くならざるをえなかった。
あるいは、「強さ」は力学に似ている。作用があれば反作用がある。誰かの強さには必ず、それに寄りかかるほかの誰かの弱さがある。たとえばご両親が、「子どもをダシにするな」という人たちが望むような形で、強くあったとする。涙を見せたり、同情を引いたりせずに毅然として、泣き言ひとつ言わずに強制送還されたとする。その「強さ」は、誰のためのものだろうか。本人のためでもなければ、娘さんのためでもないだろう。それはあたしたちが「法」や「治安」の名の下に誰かを排除しつづけている事実、そして生活を壊され追い出される人たちは怪物なんかじゃなくて、笑って泣いて日々を生きている人間だという事実に直面しないですむため、でしかない。
マジョリティが倫理的葛藤から逃れて弱くいられるために、追い詰められた人々にもっと強くなれという。ものすごい倒錯だ。

不法入国した彼らを救済したら、正規手段で入国・滞在しているほかの外国籍者がバカを見るから、譲ってはいけないとか、言ってた人たちもいた。ああいうのがいるから、真面目にやってる「良い」外国人まで変な目で見られるんだ、って。本気で言ってるんなら、全員まとめて千の風になればいいのに。もとい。風になってこの大きな空を吹き渡られたら、大気汚染が悪化する。跡形も残さず塵と消えればいいのに。変な目で見るのは見るヤツが悪いに決まってる。見るマジョリティ―見られるマイノリティという非対称な関係性が悪いに決まってる。差別する側の責任を不問に付して、非正規滞在者に責任を転嫁しないでほしい。
白状してしまうと、あたしにもそう思っていた時期があった。「不法滞在」が摘発されたとニュースで耳にするたびに、「やめてよ、うちらまで疑われるじゃん」と苦々しい感情をかかえていた。あたしはあんな人たちとは違うのに、「不真面目」な人がいるからいけないんだ、と思っていた。そんなに昔の話じゃない。日本社会が非正規滞在者を表向き「存在してはならないもの」と規定しながらも、産業構造の底辺を支える安い労働力としてかれらを必要としていて、本来非合法であるがゆえにいつでも切り捨てて追い出せる都合のいい存在にしてしまっていることなんて、考えもしなかった。今思えば、あたしはかれらを「自分とは違う」ものとして憎んでみせることで、「名誉日本人」に仲間入りさせてもらうための存在証明をしていたんだ。全くもって、「分断して統治せよ」とは至言だ。吐き気がするほどに。
あたしは今、あの頃の無知で浅薄な自分を、心から恥じている。

結局、入管は家族での特別在留許可を出さなかった。アランさんとサラさんは、娘さんの始業式を見届けてからフィリピンに発つという。何もせず、何も言わないで来たあたしには、きっと悔しいという資格さえない。資格もないあたしでも悔しいのだから、ご本人たちやそばにいた人たちの心中はいかばかりだろう。
何をえらそうに、って自分でも思うけれど、黙っているのは強制退去処分への支持にしかならない。だから、今更だけど、今からでも、言っておきます。こんなのはひどい。こんなのって、ないよ。

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*1 いわゆる「中国語」
*2 もっとも、ある言語を「ネイティブっぽく」しゃべれることと、そのことばで同年代のモノリンガルの子どもと遜色なく渡り合えることとの間には天と地ほどの差がある。なまじ発音や語順が自然な分、本当は周囲の言うことがよくわからなくても、わかっていることにされてしまったり、「わからないフリをしている」「怠けてるだけ」と決めつけられやすい。
学齢期になると教育による語彙の格差が出るので、放っておけば年があがるにつれて差は開いていく
*3 これも当時のあたしと同じだ
*4 だって、強制退去の口実に使われているのは、あたしやあなたが暮らしているところの「日本の治安と社会秩序」だ。顔のない「国民」の安全で平穏な暮らしとやらのために、ひと組の実在の家族の安全で平穏な暮らしが壊されたのだ
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テーマ : 社会問題 - ジャンル : ニュース

タグ : ニュース カルデロン一家 非正規滞在 外国人

【編集】 |  20:19 |  ファイル倉庫  | TB(1)  | CM(6) | Top↑

Comment

この問題で何が一番「まずい」かというと、不法入国して娘を不幸な境遇にしてしまった親の行動だと思うんですけども。
その親に日本に留まることを認めたら、以後同様の例が続くでしょうが、それは仕方ないということでしょうか。
もちろん、悪用する人も出るでしょうし。やはり不法滞在者は退去させるべきです。
ののいえ |  2009.03.17(火) 00:54 | URL |  【編集】
●えー
はじめまして。

えー、それはどうなのかなあ。
娘さんを不幸な境遇にしてしまった親御さんが悪いって、それは日本の入管法や外国人に対する処遇が所与の、動かせないものであるという前提に立たないと出てこないと思うんですけど。
そもそも、お二人が「不法」に入国した時点ではまだノリコさんは生まれてませんよ?存在しないひとを不幸にする可能性を想定しろといっても無茶でしょう。そして、その後二人がしたことはただ働いて、結婚して、子どもを生んで育てたというだけです。「普通」に暮らしているだけで子どもを不幸にしてしまう制度なら、制度の方がおかしいとは思われませんか?

>その親に日本に留まることを認めたら、以後同様の例が続くでしょうが、それは仕方ないということでしょうか。
同様の例なら強制退去させるべきではない、と考えています。私の記事は「ノリコさんを『帰国』させることが残酷」ではなく「2世の子を『帰国』させて『母国』への同化を強いるのは残酷、だからノリコさんのケースも残酷」なので、主旨から言って当然にそうなるかと。
全てのケースに例外なくそう思うか、は一応留保しますが、少なくとも方向としてはそちらを目指します。日本の入管制度の閉鎖性は改善されるべきです。
ていうか、理想を言っていいなら国籍制度撤ぱ(ry

なんていうか、ですね。「不法滞在」者とそうでない滞在者の間に明確で揺るぎない線が引けると考えるのは、純情すぎると思うのですよ。「不法」ってことばのインパクトが強すぎるのかな。
ののいえさんには、コチラをオススメします↓
「不法滞在外国人」ってどんな人?(http://www.jicl.jp/hitokoto/backnumber/20040802.html
深海魚 |  2009.03.17(火) 08:43 | URL |  【編集】
はじめまして。初めてコメントします。

>そもそも、お二人が「不法」に入国した時点ではまだノリコさんは生まれてませんよ?存在しないひとを不幸にする可能性を想定しろといっても無茶でしょう。

うーん。
というか子供を作る時に、今のような事になることを想定すべきだった、のではと思うのですが。自分たちは不法滞在者であるから、いつか捕まるかもわからないわけで、そうなった場合この(今から作る)子供はどうなるか。と考えれば作れないと思うのですが。その事を考慮せず作った時点で、やはり親が一番まずいと思いますね。
私は今回の事は、ノリコさんにとっては大変不運でかわいそうだとは思いますが、仕方ない範疇かと思います。幸い、日本におばもいたようですし…。
かわいそうはかわいそうですけど、子がかわいそうだからといって親まで滞在を許可するのは、「やったもん勝ち」ではないですか?それを認めちゃうと、法がなし崩しにならないか心配です。子がいるから、免れるというのも、独身者に対する差別のような。(今回の場合、独身だったら普通に帰国させられて話題にものぼらなかったのでは?)親の事情によって、子の未来が阻まれる事はあってはならないですけども、だからといってそれを免罪符に親を許してしまっていいのか…。微妙な所ですけど…。それをすると、子を自身の犯罪の免罪符のため作る親とかも出てきそうだし…。もっと、親のいない子供の施設等が、きちんとなされればいいのかもしれませんね。
ただ「親の事情によって未来が阻まれる」といった子供は、今日本でもたくさんいるわけで
大阪での私立高校の件とか)、現実問題ある程度仕方ない状態ですよね。その中で、この一家族の「仕方なさ」にこれだけ構っている暇が果たしてあるのかという気はします。バランスの悪さを感じるというか。不法滞在も何もしていない親だが、事情によって未来が阻まれている、といった子供は日本国内にたくさんいるだろうに、不法滞在して子が育ったからというゴリ押しの家族にこれだけ時間を割くのはなんだかアンバランスではと。
マラカス |  2009.03.17(火) 23:06 | URL |  【編集】
●はじめまして
マラカスさん、ようこそ。お返事が遅くなってごめんなさい。

>自分たちは不法滞在者であるから、いつか捕まるかもわからないわけで、そうなった場合この(今から作る)子供はどうなるか。と考えれば作れないと思うのですが。その事を考慮せず作った時点で、やはり親が一番まずいと思いますね。
ですから、現行の法制度を運命的なものとしてとらえるべきではないと思うのです。現にあってしまっている制度の中で「不幸」にならないように賢く立ち回るのは、あくまでご本人たちが自分のためにするサバイバルの問題です。それを他人が要求するのは、現に制度に加担している私たちの側の責任を棚に上げていることになります。特に、有権者という立場にある場合はそうでしょう。
それから私は、現に「適法な」制度によって人権を侵害されているひとが、それに対してあらゆる手段で抵抗することを否定できないと考えています。「法律だから」を言い訳にするべきじゃない、ということです。法だから正しい、ではなく、正しいことを法にするんです。民主主義を採る、というのはそういうことだと思います。
まあ、娘さんは親御さんに文句のひとつもあるかもしれませんね。それはそれで尊重されるべきと思います。が、第三者が娘さんの「不幸」を理由にご両親を責めるならば、それこそ「子どもを盾にとる」行為に他なりません。

>かわいそうはかわいそうですけど、子がかわいそうだからといって親まで滞在を許可するのは、「やったもん勝ち」ではないですか?それを認めちゃうと、法がなし崩しにならないか心配です。
ですから、在留特別許可は法の枠内の措置です。別に法に反する特別措置を要求しているわけではありません。
さらにいえば、この制度は法務大臣の裁量によるもので、あるケースに出したからといって同じような条件のほかのケースにも出さなければいけないわけではありません。平等性を守る義務がないんですね。ですから、もしマラカスさんが懸念されるように悪用される例が激増したなら、内々の基準は「なかったこと」にして再び運用を厳しくすることもできます。この辺は記事の最初に貼ったリンク先のページで専門の方が解説されていますので、そちらを読んでください。
つまり、はっきりいえばカルデロンさん一家全員に在留特別許可を出したとしても、今後の入管政策に大きな影響が出ることは考えにくいんです。個人的には、今回をきっかけにして多くの人が在留資格を得られるようになって、日本に合法的に滞在して就労するために要求される「日本人性」だとか「日本社会に利益をもたらす」みたいな条件が少しずつでもなくなっていけばいいのに、と思っていますけど。
さらに申し上げれば、ノリコさんが親御さんから引き離されるのに反対する根拠は児童の権利条約という、国内法よりも上位にある法です。入管法だけが法ではないんですよ。現に、国連人権委も介入してきたでしょう。

>ただ「親の事情によって未来が阻まれる」といった子供は、今日本でもたくさんいるわけで
>大阪での私立高校の件とか)、現実問題ある程度仕方ない状態ですよね。その中で、この一家族の「仕方なさ」にこれだけ構っている暇が果たしてあるのかという気はします。

そういうのは「全て」救済されるべきです。簡単な話です。たとえすぐに全ては救えないとしても、ひとりでもふたりでも救うことに意味はあります。その子はひとりしかいないんですから。同じ「親の事情によって未来が阻まれる」子どもであっても、非正規滞在していない親の子どもは非正規滞在者の子どもより優先して支援を受けられてしかるべき、という見解には賛同いたしません。どちらの場合も、子どもに罪がないことには変わりないからです。当たり前の話です。
大阪府の件についての私の考えはコチラ→http://sillyfish.blog2.fc2.com/blog-entry-640.html
いずれにせよ、「助けられていない」子たちを持ち出して、だからそっちも救済するな、というのは卑怯です。「こっちも助けろ」というべきです。それに反対する人はいないでしょう。
深海魚 |  2009.03.19(木) 01:24 | URL |  【編集】
>あるケースに出したからといって同じような条件のほかのケースにも出さなければいけないわけではありません。

現実的な話をすれば、これは唯の建前でしょう。
明確な基準が無いほど、前例が重要視されてくる。
ここで単純に認める前例を作れば「特別在留目当てに作られる子供」という不幸な存在が増加する可能性は否定できないと思いますよ。

今回の件が問題なのは、在留期間切れのような微妙な状況ではなく、偽造パスポートによる不法入国という、そもそも完全に真っ黒な違法行為を犯しているてという点です。
今回の例が非常に特異な案件だというなら何をしても良いと思いますが、不法入国自体はそこまで珍しい現象ではありません。
不法入国して検挙されていない人が「中学生になるまでもたせれば在留できるし万々歳」と考える可能性は高いように思うのですが、これを否定する根拠のようなものは何かありますか?
下手をすれば、そうした考えで子供を作ったがあっという間に検挙され、中学生に満たない歳の子供が強制退去させられまくるという事態に。
子供の権利や幸福を考えるなら、こうした事態を想定して防ぐのが当然でしょう。

特別在留許可については出すべきだと思います。
今回は既に出すべき条件を満たしていると言えるでしょう。
ただ、今後は今回のようにズルズルと滞在期間を延ばしたりせず、検挙時点で即、退去か在留を決めるようにするとか、あるいは不斉入国自体の取締りを強化するとか、何らかの対策を打ち出さないと。

今回の件をどうするかと、将来どうなるかを切り離せるようにして解決するのが良いでしょう。

少し話は変わりますが、今回の件を何の問題も無く認めた場合「子供を生むなら不法でも日本に入っていい」と捉えれかねないという気がするんですがどうでしょうね。
まぁ世界的に見れば人口が増えて困ってる国が多いから、両者両得な感じだとは思うんですが「日本が子供を巻き上げてる」とか言われかねない内容な気もします。
玉響 |  2009.03.19(木) 03:43 | URL |  【編集】
●えーっと、ですね
色付きの文字>玉響サマ
>現実的な話をすれば、これは唯の建前でしょう。
明確な基準が無いほど、前例が重要視されてくる。

入管実務の内部では細かく基準がきめられているけれど、公式には「ない」ということになっている、のだそうです。リンク先参照。だから、「Aさんに認められたのに同じ条件に置かれているBさんに認められないのは不公平だ、法の下の平等に反する!」と訴訟を起こしても、「許可は裁量によるもので、権利性は認められない」と言われて負けてしまうんだとか。実際に、そういうケースはいくつもあるみたいです。
カルデロンさん一家に類似した事例に在留特別許可が下りた「前例」はすでにあったと記憶しています。それ自体、「前例」を作れば次から基準が動くというわけではない、ということの証拠になっているかと。ちなみに、裁定時に「子どもが中学生以上」というのは、現行の基準です。
…マラカスさんへのお返事の繰り返しになりますが、個人的には「動いちまえばいいのに」と思っております。

>ここで単純に認める前例を作れば「特別在留目当てに作られる子供」という不幸な存在が増加する可能性は否定できないと思いますよ。
そんなに軽々しく作れるもんじゃないと思いますけどね、子どもって。妊娠すれば病院にかかる必要も出てきますし、さまざまな手続きをとらざるをえません。必然的に、「足がつく」リスクも増します。幼い子どもを抱えていては仕事をするのも大変ですし、単純に食わせていくだけでもバカになりません。ましてや中学生までって、12年以上ですよ?予想外にできた子どもをなりゆきで出産し育てた、とかならともかく、計画的にそんなことをするのが割に合うと思う人が、そうそう出てくるものでしょうか。どうも、あまり現実的でないように思います。
そもそも、望まれた妊娠・出産が3割程度しかないこの日本で、「狙って作った」子どもが、ただそれだけの理由において格段に不幸になるものでしょうか。制度の狭間で生きざるをえないのが不幸だというのなら、それは親ではなく制度の問題です。

>在留特別許可については出すべきと思います。
> 今回は既に出すべき条件を満たしていると言えるでしょう。
> ただ、今後は今回のようにズルズルと滞在期間を延ばしたりせず、検挙時点で即、退去か在留を決めるようにするとか、あるいは不斉入国自体の取締りを強化するとか、何らかの対策を打ち出さないと。
>
うーん、非正規滞在を一般社会とは関係のない「犯罪と取り締まりの問題」として考えてはおられませんか。エントリー中にも書きましたが、単にかれらが日本にいたがっているというだけではなく、日本社会がかれらをほしがっている、という側面がこの問題にはあります。それも、あくまで不安定な立場の底辺労働者として。一方で外国人労働者を必要としながら、もう一方で正規の就労が可能なビザをごく制限された形でしか出さず、必然的に「不法」就労者を生み出しているわけです。この点においてオーバーステイと不法入国の間に本質的な差異はありません。
ゆえに、他の被害者がいる犯罪と同列に扱うことはできない、と考えています。単純に取り締まり強化すればいいというものでもありません。そもそも、誰が日本(として区切られた領域)に正当に滞在することができるかは常に恣意的にしか決めることができないわけで、法律で明確に即断、みたいなのはもともとなじまない領域なのではないでしょうか。それゆえ、在留特別許可のような「法の例外」的な仕組みがもともと法そのものに組み込まれているのだと思います。

> 今回の件をどうするかと、将来どうなるかを切り離せるようにして解決するのが良いでしょう。
在留特別許可って、たぶんすでにそういうものです。私はそれをいいと思いませんが、少なくとも今はそういうものなんだと思います。

> 少し話は変わりますが、今回の件を何の問題も無く認めた場合「子供を生むなら不法でも日本に入っていい」と捉えれかねないという気がするんですがどうでしょうね。
> まぁ世界的に見れば人口が増えて困ってる国が多いから、両者両得な感じだとは思うんですが「日本が子供を巻き上げてる」とか言われかねない内容な気もします。

将来的にそう言われかねないかどうかは知りませんが、少なくとも現段階では言われないでしょうね。今の日本は、「子どもを巻き上げてる」とかそういう問題以前の閉鎖性ですから。
それとは別に、少子化に悩む「先進国」が子どもの福祉を理由にして「貧困国」から子どもを奪う、という問題はすでに起こっています。ただ、移民というよりは国際養子というかたちで顕在化しているかと。かつ、その国の内部においても貧困者やマイノリティの家庭の子どもを、「養育が十分でない(生きるために仕事を掛け持ちしてて子どものそばにいられないから、とか)」等として親の親権を奪い、富裕層の家庭の養子にしてしまう、ということが起こっていると聞きます。これは経済格差の問題なので、貧困からの脱出を支援するべきで、子どもを取り上げるのは倫理的におかしい、と思います。
が、そのことと、暮らしたい人が暮らしたい場所(国)で暮らせた方がいい、というのとは別に矛盾しないはずです。
深海魚 |  2009.03.20(金) 11:30 | URL |  【編集】

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