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2008年12月31日(水)

「文化的差異」はつくられる 

もしくは、「民族性」はつくられる。
…とかいきなり言っても「何言ってんのかワケわからん」と思われるだけだろうし、実際それもそうだなあと思ったので、こんな話を考えてみました。

【More・・・】

 いまではないいつか、ここではないどこかに、ひとりの男の子がすんでいました。別に男の子である必要はないのですが、まあ、便宜上。名前は、かりに「海水魚くん」としておきましょう。イメージ画像は、ハコフグでおねがいします。
 海水魚くんには、さいきん学校でなかよしのクラスメイトがいます。さいしょが男の子でしたから、こんどは女の子にしましょうか。「淡水魚ちゃん」といいます。イメージ画像は、ピラニアあたりで。
 淡水魚ちゃんはちょっぴり気がつよくて、ラーメンが大好きな女の子です。ちょっとめずらしい一文字の名字をもっていて、海水魚くんにはそれが、ちょびっとだけ不思議です。けど、そんなことは気になりません。おうちが近かったこともあり、ふたりはいつも、いっしょに遊んでいました。

 ある日、いつものようにふたりならんでテレビを見ていたら、淡水魚ちゃんのケータイがなりはじめました。
「あ、ちょっとごめんね」
そういって、淡水魚ちゃんは「つうわボタン」を押したのです。
「喂?你好。我正在同学家里,不用担心」
聞いたことのないことばが、淡水魚ちゃんの口からこぼれてきます。海水魚くんは思わず、淡水魚ちゃんをまじまじと見つめてしまいました。お話をおえた淡水魚ちゃんは、海水魚くんが変なかおをしているのに気がついて、こくびをちょこんっと、かしげました。けど、こんなのはもうなれっこです。すぐに理由がわかった淡水魚ちゃんは、笑っていいました。
「あー。あたしの親、中国人なんだ」
 その日はなにごともなく、夜になって淡水魚ちゃんは、おうちに帰っていきました。

 そっか、そうだったんだ。
 ひとりになって、海水魚くんはぽんっと、手を打ちました。淡水魚ちゃんは、中国のひとだったんだ。ラーメンがとっても好きなのは、きっと、ふるさとの味がなつかしいから、だったんだね!
 でも、なんだか変です。生まれてからずーっと、日本にすんでいる淡水魚ちゃんは、本当にふるさとの味を知ってるんでしょうか。だいいち、日本で食べているラーメンって、中国にもあるんでしょうか。それに、ふつう「私のふるさとは、北海道の山おくで…」とかいうのに、「ふるさとは中国」って、ちょっと広すぎます。そもそも、日本で生まれそだった淡水魚ちゃんの「ふるさと」って、どこでしょう?
  けどもちろん、海水魚くんはそんなこと、わかりません。

 海水魚くんは、いままで淡水魚ちゃんとおしゃべりした、いろんなお話を思い出しました。学校のこと、世のなかのこと、うれしいことや、かなしいこと。ふたりはわりと気があうのですが、気のつよい淡水魚ちゃんとは、ときどき、どうしても意見があわないことがありました。たまーに、本当にたまーにですが、どうしてわかってくれないんだ! と叫びたくなったり、泣きたくなったりすることもあります。
 そんなとき、海水魚くんは、「淡水魚ちゃんのわからんちん!」と、心の中でこっそりとつぶやいていました。けど、淡水魚ちゃんは中国のひとだったのだから、日本人の海水魚くんと考えかたがちがうのは、しかたないのかもしれません。これからは、たとえ意見がくいちがっても、「そういう考えもあるよね」と受けとめてあげようと、やさしい海水魚くんは思いました。
 淡水魚ちゃんは、中国人。他のひとが知らない秘密をおしえてもらえたような気がして、海水魚くんはうれしくて仕方がありません。海水魚くんのなかで、淡水魚ちゃんはただのクラスメイトから、ちょっぴりトクベツな存在に変わったようです。


そして、3か月後。

「あのバカ、最近すぐ『君は中国人で、僕は日本人だから、意見が違うこともあるよね』とか、わかったような顔でほざきやがるんだけど。こっちの考えたこと、まともに聞く気がないんならさぁ、最初から喋らせんなっつーの。
 ていうか、いちいち『チャイナドレスが似合いそうだよね』とか『今度、おいしい中華を食べにいこうよ』とか言ってくんの、マジうざいし。ならテメーはちょんまげでも結って、三食麦飯にたくあん、食ってろよー!」
タバコのけむりが立ちこめる居酒屋さんで、淡水魚ちゃんは、焼酎のロックをかたてに、クダをまいていたのでした。恋とは、ままならないものです。

めでたし、めでたし。

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いや、別に何か嫌なことがあったわけではないのです。
ちなみに私自身は、ラーメンはそれほど好きではありませんし、家族への電話は日本語でかけます。

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テーマ : 社会学 - ジャンル : 学問・文化・芸術

タグ : 寓話 民族性 文化 アイデンティティ エスニシティ 差異

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