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2008年09月06日(土)

「女」を利用してんじゃねーよ。 

■私はムカムカしているのです
久々の更新で、いきなりこんな書き出しもどうかと思うのですが。何にムカムカしているかというと、これです。
図書館にも女性専用席 ホームレス対策…「不公平」の声も (魚拓

東京都内の図書館で、女性専用・優先席を設ける動きが広がっている。現在のところ、23区内220館のうち8館で実施。女性専用車両の痴漢対策というよりは、主な理由がホームレス対策だ。「安心して使える」「使いやすくなった」と歓迎する女性の声もあるが、男性からは「不公平だ」との声もある。(安岡一成)

ええその通り、まったくもって不公平です。(非ホームレスの)男性に対してもそうですが、それ以前に当のホームレスと非ホームレス女性にとっても、不公平で理不尽な話です。
今回のニュースは図書館がホームレス排除に苦心しているとかいう件についての私からの提案 - planet カラダンサマ経由で知りました。元都民としては、こういう東京で生まれ育ったのが恥ずかしくなるような施策は勘弁していただきたいものです。

【More・・・】

■批判は懺悔から始めよう
ときに私は、「差別」に関していろいろえらそうなことを言ったり書いたりもしますが、ホームレスと思しき方を見かけると「いやだな」「危なそう」「そういう人がたくさんいるところには近づきたくない」と思ってしまうような人間であります。私がときどき利用する図書館にも行き場のなさそうなオジサマ方はいらっしゃるのですが、もし運営側が私の知らないうちに何らかの「対策」をとってかれらを近づけなくしてしまったとしたら、ひょっとして私はホッとしてしまうのかもしれません。どうせ本を読むならきれいな場所がいいとか、「怖い」人がいない方がいいとか、生活苦の人を目の当たりにすると心苦しいから目の前からいなくなってほしいとか、そんないろいろがない交ぜになった感情から。
公共の場である図書館からかれらを排除すべきではないし、偏見はよくないことだとはわかっています。5年後、10年後、「あのころは家があるかないかなんて、どうでもいいことで人を分け隔てしててさあ。ホント、あたしバカだったよね」なんていえる人間になりたいと心から思っていますが、少なくとも今はまだ、そうなれてはいません。私はけっして、ホームレス差別と無縁ではないのです。むしろ、上で書いたように直接目の当たりにしないところで排除が行われていれば、うすうす気づきつつも加担してしまう可能性さえあります。

ところで、ホームレスを不快に思い、図書館からいなくなってホッとするのは完全に私(たち)の勝手な感情です。それ以上でもそれ以下でもありません。ホームレスを嫌う非ホームレスであるところの私たちは、私たちの「身勝手」から、ホームレスなんか追い出してほしいと思い、実際に行われている排除を支持します。たかだが「そうすれば私が快適だから」という個人的な欲望によって、ホームレスから図書館にアクセスする自由を奪い、暑さ寒さや暴力から逃れられる居場所を奪っているのです。もちろんこんなのは、まったくもって「正しい」ことではありません。これが通るのは、単に彼我が非対称な権力関係下にあり、かれらがマイノリティだからです。「身勝手」と「身勝手」がぶつかり合い、強くて数の多い方が勝った。それだけです。さらにいえば、こちらの「快適な場所で本が読みたい」という「身勝手」より、あちらの「生き延びるための居場所がほしい」という「身勝手」の方が緊急性などの面で優先されるべきかもしれない、という可能性は考慮の外に置かれてしまっています。
ところが、「ホームレス対策」として女性専用席を作るとなるとどうでしょうか。この「対策」はもちろん、ホームレスに圧倒的に男性が多いという事実を利用しています。「女性が快適に利用できるスペース」を作ることで実質的に、ホームレスが滞在することのできる空間を縮めていづらくしているのです。直接「ホームレスは不快なので出て行ってください」とひどいことを言わなくて済む、実に上手なやり方です。それだけではなく、女性専用席という形をとることで、(ホームレスの大半を占める)男性から女性を守ることにもなります。ホームレスという社会的弱者を排除する、という問題を女性という社会的弱者の利益を守る、という問題に読み替えることで、私たちの「身勝手」でしかなかった排除が弱者を保護する「正義」に変貌をとげるのです。「正しくない」排除は、やっぱり心が痛みますからね。いやはや、皆サマとても善良で心やさしくて、大変結構なことだと思います(棒読み)
手っ取り早くいえば、「弱者」としての女性がホームレス排除の正当化に利用されているんです。

女を、そんなことに利用するんじゃねーよ。
そして嬉々として利用されてんじゃねーよ、私を含む女性諸氏。

女性学研究家、田嶋陽子さんも「女性の言うことを聞くことが男女差別解消になると誤解した行政の典型だ。そもそも、体臭のことをいうこと自体が差別で、行政がその片棒を担いではならない。もっと工夫すべきだ」と疑問を呈する。

この記事に引用されている「有識者」の中で一番、というか唯一まっとうなことを言っているのは田嶋さんだと思うのですが、それでもツッコミ不足の感はあります。紙幅の問題かもしれませんが。「女性の言うことを聞くことが男女差別解消になると誤解」どころじゃないですよ。ホームレス排除に都合のいい「女性の言うこと」だからこそ聞いてもらえちゃうんですよ。というわけで、もっとガツンと言っちゃってくださいよ、と思ったので代わりに私が言ってみました。一応付けくわえておきますと、ここまで書いたのはホームレス対策として女性専用席を設けることの問題であって、他の場所・目的で女性専用席を設けることの問題ではありません。誤解のないようにお願いします。
ところで、ここでも不可視化されてしまっている、首都圏在住の女性ホームレスの皆サマ。あなたがたに朗報です。東京都の一部図書館では、わざわざ女性のために快適な専用席を用意してくれているそうですよ。そこに行けば、夏の暑さ冬の寒さからも、ホームレスを襲撃する心無い人々からも、高圧的な警察の取締りからも、同じ路上生活者による暴力からも守られることができます。おまけに女性のニーズに合わせた書籍や雑誌が、席のすぐ近くに置かれていて情報収集にも最適です。すばらしいことですね。私はこういう「専用席」みたいなやり方には反対なのですが、一度作ってしまったものは有効活用しなければもったいない。「箱モノ」や公共の設備を無駄にしてはいけない、と最近よくいいますしね。というわけで、こぞって利用なさることをオススメします。

■目的外利用は問題ではない
図書館は本を読むところなので、ホームレスが雨風をしのぐために居座るのは目的外利用で、退館を求められてしかるべきだという話があります。そもそも、図書館の「目的」とは、資料や情報を収集・保管し、それらへのアクセスを提供して市民の知る権利を保障すること、でしょう。その観点からいえば、今現在本を読んでいないというだけでアクセスから締め出すのは得策とは思えません。もちろん暴れたり人に絡んだりして他の人の目的内利用を積極的に妨げるようなことはやめさせなければなりませんが、本を読んでいないことと本を読んでいる人の邪魔をすることは別です。
仮に図書館の目的どおりの使い方をしていない人には出て行ってもらうのが妥当だとしても、女性専用席は本を読んでいない人を追い出しているでしょうか?していませんね。本を読もうが読まなかろうが、ホームレスに男性が多いことを利用して、あらかじめ排除するものですよね。本を読まなさそうに見える利用者(この場合はホームレス)を最初から追い出すのは、論外というしかありません。また、非ホームレス(に見える)利用者に対して、本当に本を読んでいるのか、関係ない自習をしていないか、ただボーっと時間をつぶしていないか、居眠りしたりケータイでメールしてたりしないか、図書館では普通細かくチェックしていないと思います。ホームレスにだけ張りついてチェックするとしたら、それも不当です。
ホームレスと呼ばれている人の多くは、情報弱者の立場におかれていると思います。図書館の資料の中には、かれらがよりよい生活をするのに役立つものも多くあるはずです。図書館はむしろ、かれらにどうしたら情報を提供できるのかを考えるべきでしょう。情報を必要としていて、かつ本やパソコンを自前で買ったり、落ち着いてそれで調べ物をする場所を手に入れるための財産がない人から、数少ない情報へのアクセス手段(図書館)を奪うのは、図書館本来の「目的」に照らせば、自殺行為といって過言ではないのではないでしょうか。

■図書館だけに押し付ける?誰が?
こういうことを書くと、第一義的に福祉を担っているわけでもなく余裕もない図書館だけにホームレス保護を押し付けるのは不当だ、といわれます。けれど私の見るかぎり、福祉関係の人に出向してもらって情報提供窓口を設ければいいという人はいても、図書館が、ましてや図書館だけがホームレスを助けるべきだなんていっている人は一人もいませんが。ここでは図書館が問題になっていて、現に図書館にホームレスが集まっている事実もあるから、とりあえずはホームレスを雨風の中に追いやらないための「合理的」な手段(一部の方がとても好きそうな言葉ですね)として「図書館から排除するべきではない」といっているだけです。
生活保護その他の社会保障をちゃんとやるべきだといわれれば当然同意しますし、他の公共施設が取り上げられれば当然そこにも「排除するべきではない」といいます。当たり前です。むしろ、政府が社会保障の義務を放棄し、他の公共施設が「全ての人に開かれているべき」という公共の場としての義務を放棄したしわ寄せを受けている図書館には同情しますよ。だからといって、やっていることが正しいことにはならないってだけで。それから、念のため補足しておきますが、社会保障や他の施設が受け皿になったとしても、やっぱり図書館から排除すべきではありません。図書館が公共施設であり、かつ、「情報へのアクセスの提供」というほかの場所では得られない重要なサービスを担っているからです。
図書館からホームレスを排除するのは仕方ないとか、排除すべきだとかいっている人にこそ、聞いてみたいです。「他の公共施設でも排除するべきなんですか、それとも図書館だけは排除するべきなんですか」とね。排除してこと足れりとする人のほうが、よっぽど「排除」という形のホームレス「対策」を実施する責任を、図書館だけに押し付けてますよ。
…こういう「○○っていう人が○○なんです」論法、好きだなあ私。関係ない話になりますが、「バカっていう人がバカなんです」をそっくりそのまま適用できる方々がいますね。かつてイラクで人質になったお三方を「3バカ」呼ばわりする人たちのことです。

■ホームレス排除によって成り立つ社会
今回のニュースをめぐる一連の議論の中で、目を引いたのは以下のような意見です。私たちの社会はそもそもホームレスを排除することによって成り立っているのだから、「人権」などを足がかりにしてただ排除を非難するのはナイーヴである。むしろ、人権自体がホームレスには実質的に保障されていないことによって、非ホームレスに「私たちは(かれらと違って)人権を守られている」と実感させ、人権を有意味なものにしているのではないか、と。
ホームレス排除が、何らかの社会的規範に基づいて行われている。これは確かでしょう。そして、排除それ自体が私たちの暮らす社会を規定する価値観を形作っているというのは、大いにありうることだと思います。現に社会の中でなされているある行為が「犯罪」として否定されることによって何がこの社会で許容される行為であるかの線引きが作られるのと同じように、現に社会の中に存在するある人々が排除されることによって誰がこの社会の正当な構成員とみなされるかの線引きが作られているのでしょう。ホームレスを「働いていない人」の象徴として扱い(実際にはホームレスの大半は何らかの形で働いているのですが、この場合問題なのは実態ではなくイメージです)、かれらを排除することによって「差別されずに生きたいなら、働かなければいけない」という規範は作られています。そして社会というものは、恣意的に誰かを包摂して誰かを排除する、という営みを不可避に含んでいる、というのもおそらく正しいです。少なくとも、誰をも排除することのない社会を、私は想像することができません。
しかし、「この社会は現にホームレスを排除して成り立っている(側面がある)」と「あらゆる社会は何らかの排除を含んでしまう」という二つの前提は、だからホームレスの排除を社会の必然として受け入れなければならないということをまったく意味しないのです。ええ、まったく意味しないのです。大事なことだから二度言いました。現にある線引きを是とするかどうかは、常に政治的判断にゆだねられています。ホームレスへの差別を批判する人は、まさにその批判を通して、ホームレスを線引きして排除することで成り立っている社会規範をも否定する、という政治的判断を示しているのです。そして、私たちの社会は曲がりなりにも「人権は万人に保障されるべきである」という理念を持っています。包摂と排除をめぐる線引きの正当性は、「ここで線を引くことによって誰かが不当に排除され、人権を侵されているのではないか」と現にある線引きを疑い、常に線を引きなおすことによってしか担保されないのです。
ホームレス差別を批判する人に対して、この社会はホームレスを差別することで成り立っているのだというのでは、反論として不十分です。というか、それだけではほぼ何も言っていないのと変わりません。そんなことはみんなわかっているのです。かれらは(というか、私もですが)、ホームレスを差別することで成り立ち、ホームレスへの差別を正当化するこの社会そのものを批判しているのですから。反論するならば、ホームレスを排除する社会がホームレスを排除しない(で、別のところで線を引く)社会よりも「良い」ことを証明しなければなりません。まあ、「差別はいけない」という価値観に基づいた批判者に「良い差別」を受け入れるように説得するのですから、「やれるもんならやってみろ」に近い話になっちゃうでしょうけど。ましてや、受け入れたらホームレスの生命の危機に直結しますしね。

以上、「女性の視点」で書きました。ついでだから、女性らしく(笑)親切にやさしーく説明してみたよ。
…そういえば最近、とある先輩から「劣化ボーヴォワール」という名誉なのか不名誉なのかわからんあだ名をいただいたな。

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テーマ : 格差・階級 - ジャンル : 政治・経済

タグ : ニュース 産経新聞 ホームレス 図書館 人権 ジェンダー

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