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2004年12月15日(水)

深海魚の社会派的推薦図書 

 試験が終わりました(いろんな意味で)。まだまだやることは山積ですが一時あっちのほうに置いといて、つかの間の解放感に浸ってます。そんな窒息感覚えるほど勉強したかといわれると答えは迷う余地もなくNoですが、周りの雰囲気に引きずられて疲れたので。

 そんなだらだらとしたい日は読書がオススメ。というわけで、今日の一冊は「悪の枢軸を訪ねて」です。20041215135510.jpg

 レビューは相当長くなりますので、覚悟してお読みください。

【More・・・】

 著者はさまざまな雑誌の連載などでおなじみの雨宮処凛氏。ゴスロリで、愛国で、パンクで、反米。まさにこの世の不条理を体現したような・・・失礼、大変スバラシイお方です。

 前半で北朝鮮、後半でイラクを訪問したときのことが書いてあります。

 北朝鮮編では、右翼(!!)の人に誘われてよど号メンバーを訪れ、国内を観光してメンバーの子供たちの帰国を精神的にサポートしたりもしています。
 ここでの内容は今までに出ている北朝鮮に関する本や日本の一般の方の北朝鮮に対するイメージと大差ないと思います(ユーモラスな語り口は一読の価値ありですが)。

 そして後半のイラク編。著者はまたまた右翼のメンバーに誘われて、バビロンフェスティバルという世界的な音楽祭に当時結成していた愛国パンクバンドでライブをしに行きます。
 そこで見た「明るい反米」の国イラク。制限はあるものの言論の自由があり、ネットカフェがあり、体制に反発する人は少なくとも国外に逃げて欧米の保護を受ける権利がある国。政教分離が行われていて、女の人にブルカが強制されることもなく、アラブ社会では比較的民主的な国。経済制裁を受けるまではお金持ちで教育水準が高く、けれども制裁によって病人に与える薬もなく(ワクチンや心臓病用のニトログリセリンなどは兵器転用の恐れがあるといわれて米英がイラクへの輸出を禁止しています。国連の人道保護勧告があるにもかかわらず、です)、劣化ウラン弾による病で死を待つだけの子供たちが大勢いる国。経済制裁でフセイン体制への反発をあおろうとした目論見が外れて反米傾向を強めてしまった国(そもそも、イラン・イラク戦争でイラクを支援して軍事大国にさせたの、どこの国だっけ?)。それでも都市部には「元・お金持ち」としての余裕を持った空気が流れ、ジョークとお祭りと下ネタが大好きな国。
 著者は公賓としてライブをし、ついに大統領宮殿にまで招かれます。そこでなんと、フセイン元大統領の息子のウダイ氏と会見しています。ウダイ氏の「これからアラブ社会には大変動が起こって、2002~2005年にはイラクへの経済制裁も解除されるだろう。けれどもそのときにアメリカがまた何か画策するだろうから油断はできない。日本はイラクと同じで、アメリカに攻撃を受けた経験のある国だ。何が本当の敵なのか見極めて、闘ってほしい。」という内容の言葉が重く響きます。この言葉があった時点ではイラク戦争よりだいぶ前でしたが、皆さんもご存知のとおりこの後戦争という大変動が起こり、フセイン政権が倒されて経済制裁も解除されています。予言、当たってます。そしてその過程で、アメリカ軍の作戦によりウダイ氏と弟のクサイ氏は殺されています。このときの作戦で殺害されたのは4人とされていますが、その中の一人が元大統領の孫に当たる14歳の少年だったと言われているそうです。要人の家族とはいえ、何の罪もない子供殺してるんですよ?
 果たしていったいどこの国が、世界にとって一番危険なんでしょうか。日本は、ウダイ氏の言葉通りそれを見極める時期にあると思います。

 イラク戦争?でもテロはいけないと思うから攻められても仕方ないんじゃない?フセインは独裁者だって言うし…と漠然と思ってる方はぜひ読んでみてください。目から鱗が落ちます。
 もちろんフセイン政権に問題がないわけではありません。この本は「反米」という視点から書かれていますので完全に中立ではない所もあるでしょう。フセイン体制下のイラクは戦時中に国内の少数派を迫害したり、石油価格の協定を破った国に武力行使で応じたり、少なくとも、平和的とは言いがたい国です。けれど、その時代中国では天安門事件や、もっと前には文化大革命が起こり国内の人々が迫害されています。じゃあ中国に劣化ウラン弾落としてもいいでしょうか。よくないですよね。アメリカはベトナムや、アフガニスタンや、今回のイラクなど多くの国々に「武力行使」を行って犠牲者の子孫にまで影響が出るような兵器を大量に使用しています。冷戦時代には「赤色追放」を行い国内の共産主義者やそれを否定しない人々を迫害しました。じゃあアメリカに劣化ウラン弾を落としてもいいでしょうか。いいわけないですよね。そういうことです。
 イラク政府は9.11テロにかかわっていません。「アルカイダはイラク政府の組織だった」なんて、いまどきブッシュでも言いません。そもそもバース党は反テロです。唯一イラクがテロに関係したといえば、ビル爆破の後に「どうしてアメリカだけが標的になるのか、政府はよく考えてほしい。」と公式に発言したくらいです。確かに被害者の心情を考えていませんが、発言だけで武力行使ですか? 大量破壊兵器は最後まで見つかりませんでした。査察拒否、といいますが査察団の中に諜報組織のメンバーが混入していて、それが発覚してからフセインが査察団を拒否するようになったと当時のメンバーからの証言も出ています。そもそも、大量破壊兵器を一番たくさん持っていてたくさん使っているのはアメリカです。劣化ウラン弾は過去の話ではありません。今回の戦争でも大量に使用されています。一度汚染を受けた土地は完全に復旧するのに100年以上かかる、という説もあります。いったいどこが人道的なんでしょうか。

 処凛氏は次回はもう一つの枢軸国・イランと世界で一番悪の枢軸度が高い国・アメリカを訪れたいそうです。ぜひマイケル・ムーアあたりと組んで大暴れなさってください。

 それにしても今回驚いたのは日本の右翼がイラク攻撃反対だということ。それどころか、反戦の署名を集めたり人間の盾を派遣したりしているそうです。右翼って戦争GOGOな集団ではなかったんですね。この間渋谷の町で見かけて、「うわー迷彩服ってホントに葉っぱの模様してるんだw」とか観察して笑いものにしたりしてスイマセンでした。着ぐるみ族やサイバーを見かけても普通にすれ違うのに、思想的な団体だからってそういう目で見るのはよくないですよねやっぱり。
 とはいえ、石原都知事みたいなのも右派だろうし、左翼にも反戦集団もいれば革命だの階級闘争だの叫んでる血なまぐさい人たちもいるし。もう分類不能ですよね。つまり多数派じゃない思想で、軍備推奨なら右翼でそうじゃなければ左翼ですか。じゃあ深海魚は左翼ですか?そんな馬鹿な。

 読むといろんな意味で視野の広がる一冊、今なら文庫本になって大変お得です。
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