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2007年11月23日(金)

ママ、ミミ。 

ミミ ミミ
ギャスパー・ノエ、サンドラ・サマルティーノ 他 (2000/09/08)
日活

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去年、シネマライズをはじめ全国のミニシアターで上映されて人気を博したエコール / ゾエ・オークレール、ベランジェール・オーブルージュ 他のルシール・アザリロヴィック監督が、約10年前に撮った作品。主人公の少女「ミミ」がまとう黄色い衣服が印象的な、現代版赤ずきんちゃんならぬ黄色ずきんちゃんのお話です。
(以下、ネタバレをおおいに含みます)

【More・・・】

あらすじ:
映画はミミのお母さんにあたる女性が恋人とケンカをしているところから始まります。恋人はそのまま出て行ってしまい、お母さんは自殺をしようと洗面台の棚にあった睡眠薬をいくつも呑みます。ミミはそれを目撃してしまうのです。
お母さんが入院してしまったため、ミミはおばさんの家に預けられます。しかしおばさんは新しい恋人ができたばかり。子どもがいてはろくろくセックスもできないとばかりに、「おじゃま虫」のミミは隅っこに追いやられてしまいます。寝床はクローゼットの中だし、恋人がやってくるたびに「外で遊んできなさい」と追い出されてしまうし、怖い夢を見ておばさんの寝室を訪ねても睡眠薬で寝かしつけられてしまう始末です。
ある日、おばさんはミミと恋人を留守番に残して出かけてしまいます。一人で人形遊びを始めるミミに、恋人はそっと接近して・・・

『エコール』では最初、少女たちを見る男性の視点を演じた撮り方をしているアザリロヴィックですが、『ミミ』ではひたすら主人公の少女にとっての世界の見え方に寄り添っているように思えます。そこにうつる周囲の大人たちの姿は、理不尽で醜悪です。
人種差別的な署名を求め、恋人を得たばかりのおばさんに「そのうち若い女に取られるわよ」といやみを言わずにはいられない女性。一度仲良くなったくせに、ミミが手を出すとおじさん(おばさんの恋人)に怒鳴り込まれるような「めんどくさい女」だとわかってからは、助けを求められても「家に帰りな」と追い返してしまう隣室のアメリカ人男性。恋人からミミを守ろうとしないおばさんと、ミミを性的対象として見、体をさわってキスをせがむおじさん。彼女はそのような人々の織り成す世界に取り囲まれているのです。
性描写も印象的です。映画の中のセックスシーンというと、男性が女性の体を緩やかになでまわす、といった表現がよくされるのですが、ミミが目撃してしまったおじさんとおばさんのそれはおじさんがおばさんの上に馬乗りになって高速で腰を動かす、という「汚さ」を感じさせるものになっています。あえて醜さを強調させて撮ることによって、「お前らがエロティックと思っているものは所詮こんなものなのだ」と突きつけられているようにさえ感じました。他にミミのシャワーシーン、ベッドに勢いよく寝転がって下着が見えるシーンなどもあるのですが、後者などはその直後に股を広げる赤ん坊の頃のミミの写真がうつることによって、そこに性を感じさせるのは少女が性的に誘っているからではなく男性の一方的な都合なのだ、ということが示唆されています。そしてその、少女にエロを見出す「男性の一方的な都合」の行き着く先が、ミミを襲うおじさんなのでしょう。

全編を通して、記憶に焼きついたのは「唇」でした。お母さんが薬を飲むシーンでは、暗い画面に錠剤を呑みこむ大きな赤い唇だけが映し出されます。それがミミのフラッシュバックとして、何度も作中で再生されるのです。また、ミミに暴行しようとしたあと、おじさんが夕食の洗い物をしているとおばさんが「今日は洗い物までしてくれるのね」と声をかけるシーンがあります。おじさんは振り向いて彼女の半開きの唇を太い指でふさぎ、ゆっくりと出し入れを始めるのです。これらの「唇」は「二つの唇(ヴァギナ)」をもった存在=性的アクセス可能な女性の暗喩かな、と思いました。
終盤で傷ついたミミは夜中に家から抜け出し、母親のいる「病院」に行こうと睡眠薬を飲んで倒れてしまうのですが、そこでもまた「呑みこむ唇」がアップにされます。それをおじさんとおばさんに発見されて病院に運ばれ、今度は口から肌色の胃洗浄用のドレーンを差し込まれます。これらの描写は、ミミが母親やおばさんと同じ「女」になった(させられた)ことをあらわしているのでしょう。性的な大人の女になることは、この映画中では暴力的に傷つけられることとして表現されているのです。
病院から帰るバスの中で、「もう面倒をみきれない、よそに預けることにするわ」とミミを見放すおばさんに、おじさんが「いつでも・・・会えるよな?」と聞き返すところで映画は唐突に終わります。死ぬほど後味が悪いです。つまらない作品ではありません。でも気分が悪い。正直、ここまで詳しいストーリーと解釈を書くのが苦痛でした。それでも考えずには、書かずにはいられなかったあたり、この映画の持つ力を感じます。

オススメ度:★★★☆☆
ただし、精神的に不安定な人や落ち込んでいる人にはオススメしません。精神状態が悪化した場合の責任は取りかねます。

ちなみにこの映画、もともとサークルの友だちと一緒に観ようと思ってDVDで持っていったのでした。でも、いきなり彼女の家に押しかけるのもなんなのでどうしようか迷っていたら、パソコンを持っている後輩がいるではありませんか。これは渡りに船だとさっそく拝借して、そのまま 部 室 で 上 映 。
1時間後、全員で「うわー・・・」となんともいえない空気に包まれました。だ、だってこんな内容だと思わなかったんだもん、しょうがないじゃん!

別の後輩:「これ、18禁コーナーにおいてあったんですか?」

それは全然違うぞ坊や。でも私が悪かったです。うん、ごめん。

■ついでなので、『エコール』の方も観返しました。いくつか、気づいたことを。

・「学校」から逃げ出そうとしたローズは小船が沈んで死ぬ。規範からはずれた女の子は、誰か特定の人物というより、世界=私たちの社会そのものから罰される。

・生物教師のエディット先生は蝶をピンでさして標本を作る。一方で、最上級生たちのステージでは蝶の衣装をまとった少女たちがピンのようなものでさされる振り付けでダンスが終わる。
少女たちが蝶にたとえられています。先生はまた、最上級生の卒業を前にして授業で飼っていたさなぎが羽化したのを虫かごから放し、「繁殖の季節が来たのよ」とつぶやいてもいます。女の子が成熟することが、繁殖と結び付けられていることがわかります。

・ダンスのエヴァ先生は、かつて青リボンの生徒だった頃に選ばれて外に出ている。

・女の子たちは外見のみを褒められる。彼女たちを励ますのに「かわいいわ」という言葉は使われても、「賢いわ」と言われることはない。

・特にその中でも強調されるのは「脚」。『ミミ』が「唇」の映画ならば、『エコール』は「脚」の映画です。
怪我した生徒に「脚には気をつけて」と声をかける先生や、「その脚なら『外』でも高く売れるよ」という使用人など、たびたび「脚」に注目させるような台詞まわしがなされ、映像的にもそこに重点が置かれています。この場合、「脚」は女性としての商品価値を表しています。おそらく、「処女性」とかそんなん。
エディット先生は「昔逃げ出そうとして、罰として脚を折られた」とうわさされていますが、これってレイプの隠喩なんじゃないかな、と。

昔『エコール』に関してこんなものを書きましたが、今思うと少女たちは一方的な被害者というより、男性に望まれる女性像を内面化しつつある存在として描かれていた気がします。そして男性だけでなく、「卒業」して大人になった女性たちも、少女たちを養成する共犯となるのだろうと。
『ミミ』も『エコール』もどちらも女の子が「受け身の性」としてジェンダー化されていく過程を描いた作品と捉えることができますが、
『エコール』の監督インタビュー

ただ、ここに展開されているテーマ、“女の子は美しく可愛く、男の人に選ばれるように教育システムの中で養成される”はヴェデキント(深海魚注:原作者のこと)の時代も今も変わらず生き続けていると思います

ということばが見られます)10年間で描写の角度は少し変わっているのではないでしょうか。
ミミはおじさんに襲われるまでは完全に無垢ですが、『エコール』のほうではエディット先生に「欲求不満のくせに!」と投げつけるアリスや、自分を褒めてくれた「観客」の落とした手袋で自慰をするビアンカなど、女性がどのように見られるのかを意識しつつある様子が表現されています。しかし、それでも少女たちは、そのような意識を持つ前の無垢な「ロリータ」のように振舞うことを期待されるというねじれた構造が現れているのです。また、『ミミ』では彼女を変えてしまうのは特定の暴力的な「悪い大人(たち)」ですが、『エコール』ではそれが、ひとりひとりでは決して悪人ではない先生たちも含めた「学校」というシステムになっているため、個別の事件ではなく普遍性が見て取れるのです。そして、顔のない「観客」たちのまなざしに代表される、少女たちに性と清純さを望む非対称な力関係に、映画の観客も含めた大人たちひとりひとりが荷担して少女たちの養成を繰り返している(『学校』には毎年、新たな生徒が入ってきます)、ということが暗示され、見ているものを物語の中に巻き込んでいきます。その意味で、『エコール』は『ミミ』の方針を引き継ぎながらそれをさらに深めたといえるでしょう。

関連情報
MIMI(ミミ) MIMI(ミミ)
奥田 鉄人、ルシール アザリロヴィック 他 (1998/05)
青山出版社

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『ミミ』がなんと日本でコミックノベル化されていました。そんなに人気作品だったのか。

ミネハハ ミネハハ
フランク・ヴェデキント、市川 実和子 他 (2006/10/03)
リトルモア

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『エコール』の原作となった小説『ミネハハ』の邦訳版です。訳しているのはモデルの市川実和子さん。

ミネハハ 秘密の森の少女たち ミネハハ 秘密の森の少女たち
ジャクリーン・ビセット、ナタリア・テナ 他 (2008/02/08)
ジェネオン エンタテインメント

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日本では未公開でDVDもまだ発売されていませんが、小説『ミネハハ』をジョン・アーヴィン監督が再度映画化したものです。時期と写真のそっくり具合からしてよくある便乗映画にしか見えませんが、『エコール』には相当監督のオリジナルな解釈が入っているでしょうから、別の監督が撮るとどうなるのか興味があります。

エコールエコール
ゾエ・オークレール、ベランジェール・オーブルージュ 他(2007/04/04)
ジェネオン エンタテインメント

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こちらが去年上映されて人気を博した『エコール』。上の作品とジャケットを見比べて笑ってください。

・・・それにしても、なんで私が映画解釈をやると無理やり感が漂うんだろう。

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テーマ : 考えさせられた映画 - ジャンル : 映画

タグ : 映画評 エコール ミミ サンドラ・サマルティーノ ルシール・アザリロヴィック ジェンダー

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Comment

いやはや、坊やで申し訳ないw

しかしレビュー見てたら『エコール』のほうも観たくなってきたww
別の後輩 |  2007.11.25(日) 02:45 | URL |  【編集】
いえいえ、そういう私のほうもまだまだ青いですから(笑)
・・・そもそも、そんなに急いで老成することもないですよ。いや、マジで。

『エコール』も良い作品でしたよ。『ミミ』ほどは精神衛生に悪影響ないので、ぜひ観てみてくださいな。できれば便乗のほうと一緒に(笑)
深海魚 |  2007.11.26(月) 02:19 | URL |  【編集】
●お邪魔しマス!!!(`Å`☆)!!!
『エコール』を映画を観て参りましたマナと申しマス。

『エコール』の魅力に引かれ検索していると此処に行き着いたもので・・・無礼ながらお邪魔させていただきまシタ(ψψ●)。。。

ネタばれになるので多くは語れませんが、素晴らしい作品だと思いマス。画面の移り変わりがとても上手く、すぐに引き込まれる感じ。
街外れの森の中の、無垢な少女たちの生活。疑問と不安とが入り混じりながら舞い踊る少女たちの姿は少女趣味の私にはたまりませんでシタ!!!!

あぁ、是非(別の後輩さん)観たほうが良いデス!!!私も早くDVDを買って一人少女たちの世界に引き込まれたいと思いマス。

マナ |  2007.12.14(金) 21:58 | URL |  【編集】
●はじめまして。
こんな辺境ブログにようこそおいでくださいました。

『エコール』いい作品ですよね。映像の美しさだけでも十分及第点なのに、さらに奥に深いテーマが隠されていて、1粒で2度おいしいです。繰り返して観ると、最初のときにはわからなかった複線が見えてきたりしてまた楽しいんですよ。
それにしても、私ももうちょっとネタバレに気を遣ったほうがいいのでしょうか・・・
深海魚 |  2007.12.15(土) 01:52 | URL |  【編集】
●(@Å@!?)おぉう
わぁい★☆★ぉ返事くるとは。。。嬉し(^V^@)
ネタばれは深海魚サンの場合全然OKだと思いマス。
こういう内容の場所をもとめてマナは来た訳ですし。
もっともっと語らっていただきたいデス。
これからもチマチマお邪魔せせていただきマス。
マナ |  2007.12.15(土) 21:48 | URL |  【編集】
●ふふり。
とろいながらも、お返事はさせていただいちゃうのですよ~。
よかった、ネタばれ怒られなくて(笑)

ぜひぜひ、またいらっしゃってくださいませ♪
深海魚 |  2007.12.19(水) 00:29 | URL |  【編集】

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