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2007年08月11日(土)

開発とミートソース 

■夕食を食べ忘れていたのを思い出し、ふらりと外のカフェに入ってアイスコーヒーとミートソース・スパゲティを注文した。 中国にもスーパーマーケットといわれるものが進出して外国の食材が出回り始め、「スパゲティ」が一般に認識されたのは、ほんの10年と少し前のことだ。今では立派な腐女子に成長してしまったが、当時はまだ青空の下すくすくと育っていた幼なじみが興奮した声で「スパゲティって知ってる?あたしこないだ食べたんだけど!」と触れ回っていたのを、よく覚えている。それからたった10年。上海に比べて発展が遅れているといわれている北京にも、何十種類ものコーヒーやお茶、パスタや軽食がメニューに並ぶ「喫茶店」よりも「カフェ」と呼ぶのがふさわしい店が建ちはじめた。もっとも、出てきた料理は「パスタ」というより「スパゲティ」だし、「ボロネ-ゼ」じゃなくて「ミートソース」だったけど。
そういえば、一昔前の中国のイメージといえば、朝の自転車大移動だろう。あたしの幼いころ、移動手段はもっぱらバスと黄色いワゴン車型のタクシーだった。自転車や三輪バイクを使ったタクシーも、まだまだ健在だったと思う。それがいつの間にやら、日本で走っているようなタクシーと自家用車に置き換わっている。自動車量が急増したせいで、北京の人々にとっては常に渋滞が悩みのタネだ。かつてはフリーマーケットで地べたに敷かれたシートや荷車に並んでいた食べ物はスーパーでパック詰めにされ、学生たちはマクドナルドでおしゃべりをしている。24時間営業のコンビニエンスストアを見かけたときには、正直驚いてしまった。
「異邦人」のあたしにとっては何もかもがすごい速さで移り変わっていくようで、少しめまぐるしい。

【More・・・】

今年の北京はじめじめしていて、やたらと蒸し暑い。先生が言うには、昔はこうではなかったらしい。ここ2年ほどの異常気象のせいで、気候が南方のようになっているのだそうだ。あたしが子供のころに暮らした天津は北京に程近い街だが、いわれてみれば夏はからっとした、じりじりと焼けつくような暑さだった気がする。「私にはなぜこうなったのかわからないけれど」と前置きしながら(あたしが観察した限りだと、彼女は説明すると政治的な話題に触れざるをえなくなるようなときにこうやってほのめかす癖があるようだ)、先生はヒートアイランドと温暖化の影響じゃないかと説明してくれた。
ここでは晴れた夜でも、星はほとんど見えない。もともと大気汚染がひどいことは有名だったが、近年の自動車量の急増が拍車をかけてしまったようだ。あたしは去年、天津で鮮やかな赤と緑に染まったどぶ川を目撃している。公害病に悩まされたかつての日本を知っていると、今の変化を「わー、発展してるんだね。すごいすごい」と素直に喜ぶことはできない。経済成長に伴って物価は急上昇し、収入格差も拡大していると聞く。問題ないなんて、言えるわけがないのだ。
第一、何だってこうあちこちにマックやローソンを建てなきゃならないのだろう。どこもかしこも同じ景色になっていくみたいで、「さみしい」じゃないか。
・・・何度そう叫ぼうとして、飲み込んだことだろう。

そう、それは飲み込むべき言葉なのだ。
もし、あたしの家の近所においしいコーヒーとパスタを出すカフェができたら。何もなかった場所にコンビニができて、買い物が便利になったら。あたしは、まず間違いなくそれを喜ぶのだ。自分の近くにできたら喜ぶものを、少し離れた場所にできたというだけで嘆くのは、身勝手にすぎる。あたしたちが望むものを同じように望んでいるだけの人々が、たまたまある特定の地域(田舎、でも、「伝統的」な社会でも、何でもかまわない)に暮らしているからといってそれを非難するのは、ほんの少し早く拓けてしまった場所に住むものの傲慢だ。「さみしさ」の正体は、自分が現に何かをもってその恩恵に浴していることは棚に上げつつ、今その何かをもっていない人間がそれを求めるのはよくないことだと言い募っているに過ぎない。言われたほうにしてみれば「じゃあおまえがまず自分の町をぶっ壊して、植林でもして狩猟採集生活しやがれ」ってなもんだろう。
上で公害や格差について触れたが、それらを憂慮するならば「環境や分配に配慮して開発すべき」という主張になるはずだ。よく結びつけて語られるが、それは直ちに「伝統」や「その国らしさ」を維持した「さみしくない」社会につながるわけではない。持続可能であることや公平であることと、かつてのままの姿にとどまることはまったく別の話だ。自分の身勝手な郷愁を、環境や分配にかこつけて正当化するのは許されない。
もし「近代化」や「開発」の先にはないもうひとつのあり方を、「さみしくない」世界を本当に模索するのならば、まず問い直すべきはあたしたち自身の欲望のあり方(もしくは、方向づけられ方)のはずだ。それこそ、あたしたちが「あたりまえ」だと思っている欲望を満たすために「発展途上国」が無茶な開発を強いられて「さみしくさせられている」例なんて、はいて捨てるほどあるのだから。

ふと思ったのだけれど、あたしがつい感じてしまった「さみしさ」は中国に異国情緒を求める「外国人」としての願望と、自分のアイデンティティのよりどころとしての原風景が変わってしまうことを恐れている「中国人」としての思いが重なり合ってできあがっているみたいだ。あたしが国境の上をまたいでいるのか、それともあたしの足元に引かれた線が不確定でしょっちゅう揺れ動いているのかはわからないが、ここにいると「越境する私」というものを強く感じさせられる。
とまあ、カフェで延々そんなことを考えていたわけですが。運ばれてきた料理を難しい顔でにらみながら「世界中にレクサスがぁ・・・」とかつぶやくくらいなら、最初から頼むな!って感じですね。すいません。あ、ミートソースはうまかったです。高いけど。

今夜のひとこと中国語
遠看山有色, (遠くから眺めると山には色があり)
近聴水無声。 (近くで聞いても水の流れる音がしない)
春去花還在, (春が過ぎ去っても花はまだ咲いたままで)
人来鳥不惊。 (人が来ても鳥は驚いて逃げたりしない)

中国のなぞなぞです。答えは「絵」。特に山水花鳥が描かれることの多い中国画を指します。

 同級生:「・・・テレビ?」

アンタんちのテレビは、壊れて音が出ないのかい。

↓ミートソースよりカルボナーラのあなたはコチラ。あたしは明太子で。
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テーマ : 中国 - ジャンル : 海外情報

タグ : 中国 開発 公害 格差 環境 アイデンティティ

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Comment

完全に文字化けして読めないっす;
遙斗 |  2007.08.12(日) 08:15 | URL |  【編集】
●なんと!?
文字化けの嵐!!
いや、もしくは俺の頭がおかしくなって
ついに日本語すら理解できなくなってしまったのか!?
雲銀 |  2007.08.12(日) 22:09 | URL |  【編集】
●ふぅ
>遙斗サマ、雲銀サマ
修正しました。
まあ、別の意味で「日本語として読めない」かもしれませんが・・・しょうがないじゃん、ない頭絞ってもやっとこれなんだから!
深海魚 |  2007.08.31(金) 01:35 | URL |  【編集】

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