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2007年05月14日(月)

魚だって読書したいんだもん! 

■喫煙所で一服していたら、ショックを受けたらしい新入生に「アイドルの舞台裏を覗いた気分」と言われた深海魚です。こんばんわ。

私をアイドルに例えるとか、今日は4月1日じゃねえんだから。

■考え事モォド・ここから

更新をサボっていた間、「生命倫理」と呼ばれる分野にまつわる本を少しばかり読んでいた。パラパラと眺めただけのものを除くと、
1)
生命学に何ができるか―脳死・フェミニズム・優生思想 生命学に何ができるか―脳死・フェミニズム・優生思想
森岡 正博 (2001/11)
勁草書房

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2)
いのちの平等論―現代の優生思想に抗して いのちの平等論―現代の優生思想に抗して
竹内 章郎 (2005/02)
岩波書店

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ときて、今ちょうど
3)
弱くある自由へ―自己決定・介護・生死の技術 弱くある自由へ―自己決定・介護・生死の技術
立岩 真也 (2000/10)
青土社

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を読んでいるところだ。
この手の本を読むときはいかにも「論文」な文体を予想しがちなので、まず森岡さんのスタイルがそれとは少しずれている事に驚き、そして竹内さんの専門用語に振り回され、最後にそれと正反対に、難しい問題を難しい言葉をほとんど使わずに語っていく立岩さんの文章に当たって、正直かなり頭がぐらぐらしている。いやもちろん御三方が悪いわけじゃなくて、あたしの頭の切り替えが遅すぎるせいなんだけど。
ぐらぐらしているなりにいくつか考えたことがあるので、以下つらつらと書いてみたい。

【More・・・】

2)を読み終わって、最初は自己決定の事を書こうとしていた。「私が決めた」と、はたから見るとその人に対して不利に働くように思える選択(たとえば「尊厳」死)をする人に対して、そこには強制が働いているんじゃないか、ほかに道があるんじゃないかと問うことは出来る。けれど、そこで「もっといい道があるはずだ」と断言してしまえば、「あなたにとっていいことを私はあなた以上に知っている」「あなたは自分のこと(さえ)をわかっていない」という非常に傲慢な物言いになってしまう。そしてその問いがほとんどの場合「弱い」ものに対して向けられるのであれば(追い詰められた選択をしようとしている人に問いかけようとすれば、必然的にそうなる)、「弱い」ものだけが「自己決定」する能力を疑われることになってしまうんじゃないか、それは結果として差別を強化しかねないんじゃないかということを考えた。むしろ、さしあたりそうした自己決定を迫られなくて済んでいる人々にこそ、問いかけるべきじゃないんだろうか。
たとえば「彼女らは本当は売春を望んでいないはずだ、社会的に強制されているんだ」という論理で売春を否定し、なおかつほかの仕事をしている人に対してはそれをしないような場合を考えると、こういう批判はそれなりに当てはまるんじゃないかと思っていた。
・・・なんだけど、3)を読んだらあたしの疑問のほとんどがすでに答えられていたので膨らんだやる気が針で刺されたようにしぼんでしまった。そりゃ、あたしに思いつく程度のことはたいてい既に誰かが考えてるよなあ。かわりに3)からちょっと面白い記述を見つけたので、引用してみたい。

確認すべきは、(自己決定主義者自身が -引用者注)貧困による売春(あるいはむしろ貧困を背景とする買春)は問題であると言ったり、経済的な理由による臓器の提供(むしろ臓器の購入)は問題であると言ったりしているということである。とすると、これらもまた自己決定ではあるから、一切の自己決定にはどんな場合にも何の問題もないと言い張っているのではない。しかも、貧困によって別の仕事をすることについては問題だとされない。とすると、自己決定されるものの中のある部分については、少なくともある種の自己決定をそのまま認められないような何かがあると自己決定主義者自身が考えているということである。
(P.20)

臓器提供はともかくとして、売買春のところでは思わず「うっ」とうなってしまった。売春において自己決定を擁護する論というのはたとえば売る売らないはワタシが決める―売春肯定宣言 / 要 友紀子、小林 のん 他なんかがあるけど(そういえば、この中では立岩さんが批判されている。結構面白い本なので、お暇な方はどうぞ)この本の中でも「確かに貧困から売春せざるを得なくなるのは問題だ」と書かれていた気がする。
基本的にあたしは、貧困を理由に特定の職業を選ばざるをえないことやそれを承知で働かせる側・サービスを買う側がおいしい思いをすること自体があまり望ましくないと思うのだけど、やっぱりたとえば貧困を理由に工事現場で働くことより、貧困を理由に売春することのほうが問題が大きいとどこかで思っている。きっと売買春においては売る側が女性で買う側が男性というヘテロセクシュアルの組み合わせが圧倒的に多く、なおかつ女性が自力で生活できるだけのお金を手に入れるには性を売り物にせざるを得なかった時代が存在した(場所によっては、今でも存在する)ことに配慮しているのがその理由なんだろうけど、そういえば言われてみるまであまり意識してなかった。

2)の中では、生命倫理の諸問題、例えば「尊厳」死を語る際に「なぜ、尊厳死が認められるべきか、または認められないべきか」(なぜ②)ばかりが盛んに議論されて、そもそも「なぜ、尊厳死を考えなければならないような状況が発生するのか」(なぜ①)を問うことがおざなりになってきた、という指摘がなされている。死という究極の選択をしなければ「尊厳」が守れない、と人に思わせてしまうような事態はかなり極限の状況であるはずだけど、それが一体どんな事態なのか、本当に不可避なのかを検討することをせずに「とりあえずそのような状況が存在すると仮定して」そのときにどうするかばかりに集中しているようでは、確かに机上の空論と言われても仕方がない。
実は上記の視点は、あたし自身がものを考えるときについ「後回し」「ついで」にしてしまいがちなものでもある。フェミニズムにおける中絶の議論を少しかじってから、「なぜ①」を問うことを忘れないようにしようと自分に言い聞かせてはいるつもりだけど、ついつい忘れてそのたびに人や本に指摘されてはハッとしている。これではいけないな、と思った。

こうやって、やれ「自己決定」だ、やれ「弱者」の生存だと細かく細かく掘り下げて考えていると、たいていこんな反応にぶつかる。
「自分で自分のことを決めるのはいいことです。差別されている人や貧しい人、障害を持った人はかわいそうなので皆で助けていきましょう。命は大事にしましょう。」と「普通」に考えればいいじゃん、何でそんなにめんどくさいことするわけ?というものだ。もちろん何でそれだけじゃ終われないのかを著者の方々は口をすっぱくして解いているわけだけれど、この「普通」の考え、というのはそれなりに興味深いと思う。あたしは聞き返してみたいのだ。「どうして、それでいいと思ったんですか?」と。
というのも、およそ社会というものは「私たちはこういうものであって、こうすべきである、こうすれば上手くいく」という、一種の物語のようなものを共有しているんじゃないかと思うからだ。「普通」の考えというのはこの物語を反映していて、そこから抜け落ちてしまう人や物事は、その社会の中に在っても成員として見なされていない人々であったり、そこに目をやると物語のつじつまがあわなくなってしまうような都合の悪い事物なんじゃないかと、あたしは推測している。「普通」の考えをあえて問い返すことによって、一体何がこの社会において考えなくてもいいこと、もしくは考えないほうがいいこととされているのかが見えてくるんじゃないかと思う。

もう一つ、3冊に共通する重要な論点に「能力主義」というのがあるけれど、こっちは考えようとしたら頭がギギギギギッと嫌な音を立て始めたのでもうしばらくあたためておくことにする。もっとも、あたためたところで何かが孵るより先に孵卵機(あたしのアタマ)がオーバーヒートして爆発する可能性のほうが高いわけだけど。ああ、いっそ取り外してもっと性能のいいのに付け替えられればいいのに。って、こうやって「性能」に例えるのも一種の能力主義かな?


考え事モォド・ここまで

なお、上の文章はあくまで3冊を読んで私がまとまりなく考えたことを書き連ねただけなので、これらの本が全体的にどんなことを論じているのかのまとめには全くなっていません。どちらかというと、「枝葉」にあたる部分にばかり触れています。
詳しい本の内容を知りたい方は、Amazonのリンクをクリックしてください。

オススメ度:★★★★★
本好きならまとめて読むべし。
なお、この分野に今まであまりなじみがなかったけれどこれから手を出したいという方は1)の森岡さんの本から読むか、生命倫理の入門書的なものを1冊読んでどんなことがどんな風に議論されているのかざっと押さえておくことをお勧めします。上手く使えば、ネット上の情報でもどうにかなるかもしれませんが。
いきなり竹内さんや立岩さんから始めると、何がなんだかワケがわからなくなること請け合いです。少なくとも私のお粗末なアタマでは、なりました。

オマケ
ライターのガスが切れたので近くにあったサンクスに寄ったら、BALZAC印のライターが置いてあったので思わずお買い上げしてしまいました。随分マニアックなことやってますね。
え、もらい物のオイルライターはどうしたのかって?

こ わ れ た よ ?

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テーマ : 図書館で借りた本 - ジャンル : 本・雑誌

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