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2007年01月31日(水)

コボルトの青 

多分誰も読みたくないであろう語りを少々。

コバルトブルー / THE BACK HORNという曲があります。

♪俺たちは 風の中で 砕け散り 一つになる
たどり着く 場所も知らぬまま 燃え尽きる

一時、ケロッグコーンフロスティーのCMソングにもなっていたから結構有名でしょう。ちなみに、そのCMは「たどり着くー、場所も知らぬーまーまー・・・」で曲が途切れて、「えっ、ちょっと、どうなったの?」と非常に不安な気持ちが呼び起こされるという素敵なつくりになっておりました。
この曲は菅波栄純さんが知覧特攻隊平和会館を見学したときにできたもので、特攻隊をモチーフにしている、というのはファンの方ならご存知かと思われます。以前、この歌を「どうせ泣いても逃げても何も変わらないなら、せめて米軍に特攻することで生きた証をきざもう」と解釈している文章を読みましたが、深海魚の意見は少し違います。多分歌詞の登場人物たちは、突撃したところで「変わらないこの世界 くだらねえこの世界」しか残らないことを知っていたでしょう。「そんなこと誰だって 子供だって知ってるさ」というくらいなのですから。歌詞にある「生きた証を きざむよ 今」というのは、まさに出撃を前に最期の酒宴をして笑っている「今」のことなのだと思います。勇ましく散ることよりも、たわいのない話をしながら呑んだくれている「今」こそが「生きた証」だと。

――閑話休題。
今さっきボーッと音楽を聴いていたらこの曲がたまたま流れてきたので、特攻隊の「語られ方」について考えてみました。

【More・・・】

以前、「特攻」と日本人 / 保阪 正康という本を読みました。特攻攻撃で死んでいった学徒兵を中心とする若い兵士たちを語るとき、日本には「英霊」として「彼らは日本を守って尊い犠牲になったのだ、彼らのおかげで今日の反映があるのだ」と賞賛するか、「彼らは国によって無駄に死なされた、犬死にであった」と批判するか、の2通りしかないが、そのどちらも正しくないというのが趣旨です。「英霊」論は死を強いられた青年たちの心情を踏みにじっているという点で、「犬死に」論は彼らの心を思いやらずに超越的な立場から論じている非人間性で、死者への冒涜である、と。
通して読んでも「犬死」論がどう間違っているのか、アホの深海魚にはよくわからなかったのですが。むしろ「英霊」論だけが悪いわけじゃないですよ、「右」だけを非難してるわけじゃないですよ、というエクスキューズに聞こえたといったらうがちすぎでしょうか。うがちすぎですね。ごめんなさい。

でも、この方とは違う理由で私にも「犬死に」論への違和感があります。
特攻隊員が「犬死に」だったと語られるとき、そこには主に二つの理由が提示されています。一つは、彼らが出撃した時点において日本の勝ち目がないことはほぼ明確だったのだから、それでも「死」を確実にもたらすような作戦に従事させるのは無意味で、許されざることである、という視点です。これには「そうですね」としか言いようがありません。もう一つは、特攻攻撃が初期はともかく後半になると敵方に対策を取られてしまって成果をあげることが難しくなっていたのに、それにもかかわらず青年たちが死に向かって飛び立たされた、というもの。私はこれには、少し疑問があります。
兵士が戦場において第一に期待されることは、「お国のために殺す」ことのはずです。特攻においては「お国のために死ぬ」ことが第一とされてしまい、むしろ成果が上がらなくても出撃させるというのでは「結果はどうあれ死ねばお国のためになる、死ね!」と言っているに等しい状態です。これは確かに異常で、嘆くべき事態でしょう。
けれど、じゃあ連合軍側が対策を取れなくて、特攻が「戦果」を挙げていればよかったんでしょうか?それによって太平洋戦争の結末そのものが変わりうるかといえば、変わらないでしょう。その中で、自分だけが死ねば「犬死に」で、相手も殺せば「犬死にじゃない」んですか?より多くの死者がでたほうが「マシ」なんですか?日本人だけが死ぬより、日本人もアメリカ人も死んだほうがいいんでしょうか?

不謹慎な物言いを、お許しください。私は「犬死に」のほうがまだマシである、とさえ思ってしまいます。特に、戦争に反対している人や自国人と他国人の生命の価値に上下をつけることを嫌う人が後者のほうの「犬死に」論を唱えているのは、なんか違うんじゃないかなーと。いやもちろん「戦術としてみたって、特攻はおかしい」ということなんでしょうけど、「戦争はよくない」「命は平等」という現在の価値観でものを語りつつ、同時にそれをやるのは一貫性がないような気がします。私が潔癖症すぎるのでしょうか?
ちなみにこの考えは、先ほど紹介した「特攻」と日本人 / 保阪 正康の中にある、著者と息子さんとの対話から触発されています。

「でも特攻隊員が体当たり攻撃をすることによって、アメリカの海兵隊員も何百人も死ぬわけだろう」
「そりゃそうさ。それが戦争だよ」
「そのアメリカ人のことに誰が思いを馳せるんだよ」
「それはアメリカ人たちの問題だよ。彼らも彼らなりに追悼しているはずさ。そこまでは私も知らない・・・・・・」
「それではいつまでたっても戦争を続けているということじゃないか。活字の上で戦争をくり返しているということになるのじゃないか。そりゃあ特攻隊員も気の毒だとは思うけど・・・・・・」

(P.33)

という部分です。これを受けて著者の保坂さんは

私と息子との会話の亀裂の原因は、ナショナリズムについての理解にあることに気づいた。特攻作戦にこだわり続けているのは、私たち自身のナショナリズムへの渇望が背景にあることがわかってきたのだ。
(P.34)

とまとめているのですが、そこを読んで「あぁ、真理だなあ」と。無意識にでも自分の中で特攻隊員とアメリカ海兵隊員の生命の間に軽重をつけなければ、特攻作戦の特別視は成り立たないわけです。
前々から私の中に在った、特攻隊をめぐる語りへの違和感は、そこに端を発していたのだなあと。それにしても、この息子さんは当時高校生だそうですよ。優秀だな、オイ。

今日の小ネタ
asahi.com:「女性は子どもを産む機械」発言が波紋 野党が辞任要求 - 政治 (魚拓)
柳沢厚労相の問題発言について。相変わらず反応が遅いですが、大器晩成ということでご勘弁くださいませ。え、どこが「大」器だって?じゃあ、名器晩s・・・すいませんごめんなさい死んできます。
死ぬ前に続きを書き残しておきますね。いろんなブログをめぐってこの件への反応を見ていたら、普通に怒っている方の他に「なぜそこまで怒るのかわからない」というのもちらほら。

何を隠そう、私も彼の発言に怒りを感じた一人なんですが、じゃあなぜ私は怒ったのだろう、と考えてみました。
人の営みを「機械」や「装置」に例えて論じることはそう珍しいものではないのですが、普段それらの論じ方には私は腹を立てたりはしません。じゃあ柳沢さんの発言のどこがムカツクのかというと、「女性だけ機械に例えた」ことに尽きるのではないかと思います。女性の身体そのものを「機械」とした上で、少子化はその機械たちに頑張ってもらうしかない、と、女に少子化対策の責任を嫁しているわけですから。じゃあ、あんたたちはなんなのだ?「女が頑張ってね、俺ら何もしないから」というつもりですか、それとも自分らが主体として「機械」を操作して子どもを産ませるんですか?何様?ということでしょう。
奇しくも、長年子どもを産み育てることが女性だけの責任にされていたこと、女性が子どもを産むためだけに存在するかのように語られてきたこと(女性=産む機械、というのは機械に生殖機能しかついていないことを連想させます)、男性が「主体」で女性が「対象」という差別構造があったこと、といった歴史的経緯が存在します。それらを全て、しかもおそらく悪気なく踏襲してしまっている発言であることが、余計に怒りを誘ったんだと思います。だから、単純に機械に例えなければいいわけではないんですよね。「機械」という言葉こそ使っていなくても、同じような問題を孕んだ言説は世に溢れていますから。その点、より目につく「叩きやすいところ」をこぞって叩いてしまったかな、という感はあります。
最初に思っていたより「なぜ柳沢発言に怒るのか」という問いに答えることは、難しいのかもしれません。うーん、じっくり考えよう。

で、それはそれとして、柳沢さんの言葉には嫌味の一つも言って差し上げたくなります。こんな感じで↓
「おっしゃいたいことはよくわかりましたから、種付け機械はこんなところでガチャガチャ講演なんかしてないで、おうちに帰ってベッドでお仕事に励んだらいかがでしょうか。ぜひ『一人頭で頑張る』ことの範を、国民に示してくださいな。行動で」

今日のひとこと中国語
機械→「機器(ジーチー)」
機械は大切にしましょうね、皆さん。と、機械クラッシャーで有名な深海魚が言ってみます。

↓いいから早く死んでこいと思うあなたはコチラ
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テーマ : 歴史 - ジャンル : 政治・経済

タグ : THE BACK HORN 特攻隊 犬死 柳沢厚労相 機械 ジェンダー

【編集】 |  23:26 |  ファイル倉庫  | TB(0)  | CM(4) | Top↑

Comment

blog訪問ありがとうございます

コバルトブルー良い曲ですよね!
僕はカップリングの白い日記帳も好きです
いーじす |  2007.02.01(木) 01:01 | URL |  【編集】
去年の末に,米国立公文書館に保管されている米軍機密資料から,特攻の命中率の推定が日本の予測を上回る56%となっている事がわかったようですよ.
http://forum.kijiji.co.jp/about230.html
"犬死"を気にする人はコレで気が晴れるでしょうか.
命中率だけでなく,破壊力もそれなりにあったはずだし,何より米兵に与える心理効果を考えると,それほど無駄な作戦とも思えません.
"ジハード"の自爆を行う"聖戦士"の存在は,国外に対して恐怖を与えると同時に,国内では勇敢に戦う者の象徴として国民をまとめる要に成る.
倫理観からの批判さえあがらない土壌なら,合理的に見てかなり利の多い作戦じゃないでしょうか.戦術ではなく戦略ですこれ.

まぁ結局,戦争中の行為の是非を問うのに,作戦としての有効性はあまり関係ないつーことでしょうが.



女性が子供の生産機械なら,男性は労働機械.
今の日本はこんな感じの見方のおっさんが結構居る気がします.
女性の人間性の軽視を止めるのではなく,男性側を引き下げる事で合わせたんでしょうか.

柳沢氏は女性蔑視の意識があって発言したのかもしれませんが,
人間を機械や化学反応,プログラムなんかに例えて話をしてしまいがちな理系としては
他人事として批判してる場合じゃない気がします.

玉響 |  2007.02.01(木) 03:28 | URL |  【編集】
●♪僕は風になり 君は蝶になる
>いーじすサマ
はじめまして。
『白い日記帳』いいですよね。カラオケに行くと、つい熱唱してしまいます(笑)

>玉響サマ
情報ありがとうございます。でもこれ、初期の数字じゃありませんか?
>"ジハード"の自爆を行う"聖戦士"の存在は,国外に対して恐怖を与えると同時に,国内では勇敢に戦う者の象徴として国民をまとめる要に成る.
倫理観からの批判さえあがらない土壌なら,合理的に見てかなり利の多い作戦じゃないでしょうか.

特攻に対する倫理的批判を抑え、兵士たちの死を「英霊の尊い犠牲に応えるため」と、よりいっそうの犠牲の供出をさせる道具に転化させていった装置がまさに「靖国神社」であり、「英霊」論であった(である)、ということですね。

作戦としての有効性を語るのはもちろんかまわないんですが、「作戦としてみると」とか「当時の日本軍の視点で見ると」と、留保をつけたほうがいいと思います。それをせずに無自覚に特攻隊員の命だけが特別であるような語り方をしてしまうのは、やっぱり保阪さんの言うようにナショナリズムが根底にあるんじゃないでしょうか。
そして、そのナショナリズムを共有できない私はどうも違和感を覚えてしまうんですね。

非正規雇用者の大半は女性ですし、実際には女性も労働機械にされている気がしますが。
そういう見方をするおっさんっていうのは、結局自分(たち)だけは別、と思ってるところがミソですよね。だから、たいていの場合槍玉に挙げられるのは、自分たちを含まない若い世代なわけで。ああいうのはムカつきます(笑)

文系も、人の感情や行動やなんかを「装置」とか「効果」とかで語ったりしますよ。特に社会科学系は顕著です。
他の人はどうか知りませんが、私はそうやって例えられただけでは別に腹は立たないです。だからこそ、柳沢発言はそれとどう違うんだろう、というのを考えてみたいと思いまして。

これはちょっと極論なんですけど、そもそも少子化だから子どもを増やさせようという発想自体が、個人の産む産まないを決定する権利に国家が介入する「余計なお世話」なんじゃないでしょうか。
産みたくても産むことを断念せざるを得ない(たとえば未成年である、未婚である、経済的に苦しい、パートナーの支援が得られないなどの理由で)人々が安心して子どもを産めるようにするのは「産む自由」を守る取り組みとして必要でしょうけど、今の少子化対策がその辺の層を手厚くケアしようとしているとはとても思えないんですよね。先進国で出生率減少に歯止めがかかった国はたいてい、婚外子の割合が増えているというのに。
深海魚 |  2007.02.04(日) 23:47 | URL |  【編集】
●ちょっと訂正
特攻隊員の命だけを特別視するというより、無意識に当時の日本軍や特攻隊員の立場に立った語り方をする、といった方が正しいかもしれません。なんで、意識せずに当時の日本に自分を投影するのかな?という。
多分それは「日本人だから」なのでしょうが、理解はできても共有はできないです。
深海魚 |  2007.02.05(月) 00:10 | URL |  【編集】

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