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2006年11月03日(金)

脱アイデンティティのカタルシス 

上野千鶴子さんの単著と共著を一冊ずつ読んでみました。基本的に私は主に対談・インタビューなどで発揮されるこの人の放言・暴言癖が好きではないのであんまりいいイメージを持っていない面があるのですが、それを差し引いても論考には見るものがあると思うので。

生き延びるための思想―ジェンダー平等の罠 生き延びるための思想―ジェンダー平等の罠
上野 千鶴子 (2006/02)
岩波書店

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テロと対テロ戦争、女性兵士などの問題を通して男並みを目指すだけでは終わらない、「やられたらやり返せ」の死ぬための思想ではないフェミニズムの必要性を訴えています。女性史・女性運動の批評もあり、勉強になりました。
個人的には主題よりも「国家への部分帰属」を語っているところに共感しました。私が昔から抱いてきた問題意識にバッチリヒットだったので。

オススメ度:★★★★☆

脱アイデンティティ 脱アイデンティティ
上野 千鶴子 (2005/12)
勁草書房

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20世紀の社会を語る上で欠かせなかった「アイデンティティ」の概念を、複数の著者が様々な視点から問い直しています。各人の焦点や「アイデンティティ」へのスタンスは統一されていなく、全員がタイトル通りの「脱アイデンティティ」を支持しているわけではないことは要注意です。
私が読んで特に面白かったのは冒頭の上野千鶴子さんの章、伊野真一さんの章、そして千田有紀さんの章。こうしてみると、今の自分の関心が女性学やそこから派生した学問に向いているのだということがよくわかります。浅野智彦さんの論は検証・若者の変貌―失われた10年の後に / 浅野 智彦とあわせて読むと、現代の若者の自己のあり方の変容を論じながらもそれを否定すべきものとは捉えていない、という彼の立場がはっきりします。それに比べて、三浦展さんの論文は俗流若者論(by 後藤和智さん)の香りが漂ってきてちょっと拒否感を覚えました。
これらの雑多な論を、最後に上野さんが終章で俯瞰的にまとめています。最初の本に比べると(論者にもよりますが)やや難しく、特に頭が悪く学問的素養のない深海魚などは四苦八苦して読み終えるのにかなりの時間がかかりましたが、その苦労を乗り越えてでも一読の価値はあったと思われます。でも具合が悪いときや頭が疲れているときに読むのは激しくオススメしない。

オススメ度:★★★☆☆
ただし面白かった論文には★5つあげてもいいです。

【More・・・】

『脱アイデンティティ』P.279
>女をめぐるカテゴリーのダブルスタンダードは、基本的には「娼婦」と「主婦」のメタファーをめぐるものである。
(中略)
女は常に貞淑さや誰に所有されているのかという点、性的にアクセス可能なのかという観点から値踏みされ、蹂躙してもいい女と、守られるべき女とに分断されている。

あら、デジャヴ
うーん、これは私がかじった知識の断片を元にめぐらせた妄想思考がたまたまフェミニストたちの理論に近いところに行きついたのか、それとも今までの人生のどこかで刷り込まれたものの劣化コピーを垂れ流していたのか(笑)

■私の先日の尾辻さんへの質問は、実はこの本の伊野さんの論文も念頭においていました。え、読みが浅い?誤読してる?すいませんごめんなさいバカなんです(汗)
あくまで「も」なんで、「同性愛者」というカテゴリーが持つ、ある人の人生の中で「性的対象の性別」のみに注目してその人を分類することへの疑問だとか(そこを焦点化するのはいいけど、そこだけが焦点になるのはゲイ/レズビアン/バイセクシュアルなどの当事者を性的な存在としか見ていないようで失礼な話じゃないかと思う)、性的指向を他の性のあり方から差別化させることへの疑問、というのはもう少し以前から抱えていますが。
ところでこれは、その辺の議論を知っていてあえて知らん振りして質問したことになってしまうのでしょうか。しかも思い返してみれば、質問の目的が自分の疑問の解消というより、そういう疑問点が出されていることをやりとりを通してその場にいた人に知らせることにあった・・・のかも?いずれにせよ会話がかみ合わなかったので果たせませんでしたが、ちょっと我ながらどうかと思います。反省。

■ところで今回の2冊に共通する「国家や民族に完全に帰属しなくたっていいじゃない」「エスニック・アイデンティティやナショナル・アイデンティティが典型的でなく、複合的で何が悪い」という調子の内容はまさに私が誰かに言ってほしかったこと、でもあります。
中学生か、下手をすれば小学生のころから持ち続けてきた「日本人」「中国人」というポジションへの違和感、どちらかを選び「心から」帰属しなければならないという圧力への反発を専門家が言語化してくれた、それは非常に力づけられた気分です。しかし逆に私が知識欲というより、単に自分の思っているとおりのことを偉いセンセイに言ってもらって自己満足したいがためだけにこれらを読んでいるような感覚に襲われ、同時に少し後ろめたさも感じます。

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テーマ : 人文・思想に分類される本の感想 - ジャンル : 本・雑誌

タグ : 上野千鶴子 アイデンティティ フェミニズム 書評

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