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2006年07月23日(日)

働く過剰 

*タイトルの本を深海魚は読んでいません。なので内容とは一斉関係ありませんがあしからず。
■一昨日、昨日と製本工場に派遣されてきました。ダイレクトメール用のカタログ冊子をひたすら仕分けしたり、開梱したり、コンベアに載せたり、っていうお仕事です。3ヶ月ほど前に1度行ったんだけれどすっかり勝手を忘れていて迷惑かけまくったのはご愛嬌。いや、ごめんなさい。
ところで冊子って重いですね。50冊1包みになってるのを運ぶんですが、これが深海魚さんの力じゃびくともしません。

 リーダー:「それ、女の子の力じゃ運べないよねえ」

いえ、私以外は夏休みの高校生もパートのおばちゃんおねえ様もちゃんと運んでます。自分が情けないだけなんで気休めは結構です・・・
あんまり色々気遣ってくださるんで、「そうか、私も黙ってればか弱げな娘さんに見えるのか!」と少々驚きました。口を開けば(ピーッ)とか(ブブーッ)とかばっかり言ってるのにNE!

ところでこういう仕事をすると今までポストに入っていても開封されることもなく古紙回収に直行していたダイレクトメールがほんの少しだけ愛しくなります。ああ、これ現場にいたアラブ人のお姉さんが一つ一つ手作業で検品してるんだよなあ、とかそんな感じで。まあ通販なんて買わないけどね。

■↓成城トランスカレッジ様経由で
「ニートを生み出す社会構造は 社会学者立岩真也さんに聞く」
から少し考えてみました。働きながら。
*緑字は引用です。記事中の注釈や強調は全て深海魚によります。

【More・・・】

インタビュー内では、現代の若者は就職が以前より厳しく仕事があったとしてもきつい割に意味を感じられないものが増えている、という指摘がされています。*1
もちろんこれはマジョリティ男性に限った話で、文中でも指摘されているように女性にとっては、そしてマイノリティ男性にとってはそれ以上に厳しい状況が以前からずっと続いてきたわけですが。特に女性に関しては、雇用機会均等法で改善されたと思ったら不景気で逆戻り、というところでしょう。

>今は自分が働かなくても世の中まわっていくのに、働かなければならないことになっている。仕事も、必要性があるんだかわからないわりにきつい。で、しんどくなる。

この「必要性があるんだかわからないわりにきつい」仕事というのはまさに深海魚がしてきた仕事そのものでもあります。例えば、背後に積んである山のようなカタログ冊子を機械に入れるとき、わざわざ逆向きに積まれた冊子を一束ずつひっくり返すんですね。これって、私がやる意味はあるのだろうか、最初からひっくり返しておけばいいじゃない、となります。わざと仕事増やしてんじゃねえのかコノヤロウ、と。けれど、こうした必要性が疑わしい余剰な(ように見える)部分にしか私がお金を稼ぐ余地は残されていないわけです。え、バイトを変えろ?いや、今回のテーマはあくまで「このバイトをしている私」として考える、というものなので。

■振り返って、現在の「ニート」に対する言説を考えてみましょう。相変わらず「働く意欲のない甘えた奴ら」という認識がベースとなっています。「選ばなければ仕事はある。俺たちだって厳しい中頑張っているのに、ぐだぐだ言って働こうとしないのは甘えだ」と。しかし、全ての人が仕事を選べない状況にあるわけではありません。労働体系の変化によって雇用が一握りの「中核的正社員」(by 山田昌弘)とその他大勢に分かれつつあるとはいえ、すでに安定した職を得ていた上の世代の多くはいまもその地位を保有し続けています。
結果、中核的正社員とそれ以外という選別をされるのは主に若い世代です。そして「それ以外」になってしまった若者たちが非典型雇用下で必要性の感じられない仕事をするか、失業するか、「ニート」になるかという選択を迫られることになる。「仕事」という資源は有限で、経済の高度成長が望めない以上これから大きく増えるとは考えにくい。後から来た世代がその資源の残り少ない部分を奪い合っているわけです。*2
先行世代(の、マジョリティ男性)と若い世代とでは最初から開かれている選択肢が違いますから、その違いを無視して若者の意識の問題として議論するのは的外れです。

とはいえ、報酬を得ずには社会で生きていくことは難しい。そこで仕事の機会を分け与える「ワークシェアリング」と、もういっそ報酬そのものを分け与えてしまう「ベーシックインカム」という二つの方法を立岩さんは提唱しています。

■まずベーシックインカム*3についてですが、生活水準・労働状況にかかわらず最低限の所得を全ての個人に提供するという考え方ですね。先進国では完全雇用を達成することが難しくなってきたので、全ての人が働くことを前提としない社会保障のあり方を考える必要があり、これはその一つです。そのかわり他の社会保障はやめてしまうことになり、障害者など暮らしていくために必要な費用が他より多い方にはまた別の対応が必要になると思いますが。
これは一見結果の平等論のように見えますが、実はそうではありません。だって最低限の所得さえ保証されていればあとはその人がいくら儲けようが知ったこっちゃないわけで、格差は容認しているんですから。バックラッシュ! なぜジェンダーフリーは叩かれたのか? / 宮台 真司、上野 千鶴子 他の中で宮台さんが

>欧州では「(階層上昇機会が乏しくても)底辺がある程度高くあればOK」という条件をつけ、
(中略)
格差自体を悪と見なす「田吾作のツバ迫り合い」がない。(P.70)


と書いていますが、ベーシックインカムはまさしくそうした考えを体現していると言っていいでしょう。
一方、日本は平等志向の強い社会であったといわれます。「人並み」に頑張ったのだから、それなりの結果をみんなが同じように得られるべきだという。努力平等主義ってヤツですね。「人並みに頑張っていない」フリーターやニートに、その恩恵は与えられません。現在の日本でベーシックインカムの導入を提案したところで「働いてもいないフリーライダーに俺らの税金で食わせてやるなんてモラルハザードだ、ギャース!」となるのがオチ。彼らに「人並みに頑張る」だけの機会が与えられていないんじゃないかという視点が抜け落ちています。スウェーデンでさえやっと部分的な試行が始まったばかりのこの政策を日本がすぐに国単位で実行できるというのはなかなか難しいのですね。

余談ですが、この視点の欠落は日本版「ニート」の概念そのものにも見られます。本家イギリスではNEETという言葉には若年失業者も含めています。そして彼らが多く存在する一因には社会的排除があるんじゃないかと考えているのね。ところがこの概念が日本に輸入されたら、失業者は除外されてしまった。あくまで就職活動をしていない無業者に限定することで、社会の責任ではなく本人の責任だということを強調することになってしまいました。もちろん実際には社会的要因も多分にあることは周知のとおり。

■そしてワークシェアリング。これ、実は深海魚もよくわかっていなかったんですが、要は仕事を分け合うということらしいです。
分け合うといっても、例えば私はこの2日間とも夕勤という形でバイトに入り、早番の人と仕事を分け合ってより多くの人にバイトを回すことに一役買っているわけですが、こういう風に時給数百円の非典型雇用の間で融通しあえばいいと言う意味ではもちろんないです。というかそれじゃ今と何も変わってない。

>一つは労働の分割・分配です。働きたい人が4人いて、仕事の席が3つしかないとします。そのままなら4人目をはじいてしまいますが、3人の働く時間を減らして、仕事を4人目にまわそうというのです。みんなの労働を増やすのではなく、割っていく。労働時間が減ったら給料も減りますが、もしみんなに仕事をさせたいなら、今席をとっている人もそのぐらいは飲まないといけない。

労働の分配というからには、現在安定した仕事を独占している人たちと、不安定就労するかそもそも仕事に就けないかという人たちとの間でシェアするような制度を作らなきゃいけません。これで、働く機会さえ得られない人間がいる一方でサービス残業や長時間労働のために過労死も多発する、という不均衡の是正も望めるわけですね。
けれど、そうやって「席」を新しく用意しても働かない(もしくは働けない)人間っていうのはいるでしょう。全員が働くことを前提にして働けるハードルを下げれば下げるほど、残った働けない人たちの生活が脅かされることが正当化されやすくなってしまいます。ワークシェアリングによって働きたい人が働ける状況をなるべく用意し、その上で働く・働かないにかかわらず生存権は万人に保障されているんだということをきちっと言わなければならないわけです。今の日本は正反対のことをはじめようとしている気がしますけどね。「ニート税」とかね。

■ところで立岩さんは職業訓練を否定していますけど、職業訓練が役立つ層というのもいると思うんですけどね。「仕事に就くといっても、どうやっていいかわからない」という人たち。そういう人たちには職業訓練の門は開かれているべきだと思う。
ただ、無業者がみな職業訓練を受けなきゃいけないとか、「フリーター」「ニート」問題は若者を訓練することで解決できるとか(アホか)、子どもに職業訓練(それもたいてい、職業の本質である『労働の代償として賃金を得る』というところを含まない『職業体験』)をさせれば「ニート」になるのを防げるとか、そんな馬鹿みたいな議論になることだけは絶対に防がなければいけませんが。

■まとめ。
誰もが有償労働をしなければいけないという前提*4は成り立たなくなりつつあります。仕事をするということは義務ではなく権利として考えるべきで、働きたい人に働く機会を与えることと、働いているかどうかにかかわらず暮らしていく権利を保障することが両立してなされなければなりません。
全ての人が無条件に肯定される社会を、とあえてイデオロギッシュに締めてみます。
生きてるだけで金よこせ!(by 雨宮処凛

*1 今年の求人状況はやや回復したけれど、それはあくまで新卒者にとっての話で就職難の時期に定職につけなかった人間に十分な求人が回ってくるわけではありません。
*2 これから先、少子化によって「残り少ない資源を少ない人数で分け合う」ことになれば1人ずつの取り分はあまり減少しないのかもしれませんが、資源の中身である雇用体系が変化している以上、上の世代と同じものを得られるわけではないかと。
*3 参考:最低限所得保障 - Wikipedia
*4 これ、なぜか「専業主婦」に対しては決して適用されません。

■ところでこの手のバイトは色々考えさせられるので、未経験の方は一度やってみて損はないかと思われます。特に将来経済なんかをやろうと思ってる学生さんには得るものが大きいかと。ゆきなちゃんとか、受験終わってからでいいからやってみな。
・・・とまあ、そんな感じのことをとりとめもなく考えながら仕事をしていたら腕に限界が来ているのに気付かず、大事な製品を床にぶちまけてしまった深海魚でした。

■今日のひとこと中国語
カタログ→「訂単(ディンダン)」
レストランのメニューは「菜単(ツァイダン)」といいます。

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テーマ : 労働問題 - ジャンル : 政治・経済

【編集】 |  23:48 |  日常  | TB(0)  | CM(4) | Top↑

Comment

●あの手の倉庫内軽作業は辛い. . .(泣)
久々に長い文を読んでしまった. . .

いや、これは決して勉強してないとか言うわけじゃないよ?
シテナイワケジャナイヨ?

せんせ~!
ベーシックインカムって国民に無償の給与が与えられるってことなのだろうか?
どうも経済学は苦手でして(笑)
間違っていたら鼻で笑って結構です(泣)
もしベーシックインカムがある程度の生活水準を国民に保証する
見たいな物だったとして、それって今の不景気な世の中で
できるんでしょうか?
ん~. . .すでに鼻で笑われてそうだが、仕事がないのは不景気で
お金がないせいであて、それなのにないものをみんなに与える
って言うのはどういうことなん?
オイラのか弱い脳みそではそこがわからないみたいです(泣)


っとまぁ、そんな頭の悪そうなことを言ってしまう雲銀でした。
ついでに言うとこの前、商品の割り箸を袋ごとカッターで切り裂いてしまいましたが何かww
雲銀 |  2006.07.24(月) 08:31 | URL |  【編集】
●あれ絶対「軽」作業じゃないよね
久々に長い文章を書いてしまった・・・

勉強ってなんですか、おいしいですか?

ベーシックインカムの理解はそれであってると思います。全ての国民(国単位で行うならね)に同額を一律に与えるところがミソ。あ、もちろんベーシックインカム以外にも最低限所得を保証する方法は考えられてますよ。いろいろと。
財源ですが、例えば今の生活保護だと実際に給付されるお金よりも審査や「生活保護なんて諦めろ」と説得しに行く職員の人件費のほうがかかっているらしく、ベーシックインカムにすればその辺のお金が必要なくなるのでそれを給付に回せば何とかなるんじゃない?ということらしいです。今の日本だと従来の社会保障さえ上手くいっていないのですぐには無理だと思いますが。
仕事が足りない、っていうのは不景気のせいだけでもなくて、そもそも全員が働かなくても生産が事足りてしまっているらしい。これは景気が回復しても変わりません。だから、全員が1働くことが出来なくてAさんが1の仕事を独占しているのにBさんは0、というのが今の状況で、それを生活していける分だけBさんに分けてあげなさい、っていうのがワークシェアリングだそうで。仕事を分けてあげるのが嫌なら、それはあんたがBさんの働く権利を勝手に奪って働いているんだからその分の報酬よこしなさい、というのがベーシックインカムの考え方。
いずれにしろ、仕事が増えることは考えにくいんだから今持っている人がいくらか手放すしかないんですよね。

私も経済は専門外ですよ。というか何一つ専門的に語れるものなんかないんだけど(笑)
なので、少しでも勉強している人が読んだら鼻で笑われるだろうなあというのを覚悟でこれを書いています。所詮バイト中の妄想だしね。
深海魚 |  2006.07.24(月) 12:49 | URL |  【編集】
●あれが「軽」なら「重」っていったい. . .
なるほど、えっとつまり今の不景気は
機械化が進んだ成れの果てってことなのかな?
んでそれでは人間働けないから
少ない労働をみんなで分けるかもしくはいっそ無償の保障を
分け与えてしまおうではないかってことですなww
なんだかSFでよく出てくる機械(ロボ)が人間を侵略する
見たいな事とが現実に起ってるっぽくてキツイなw
それだったらいっそのこと世の中をもっとアナログな世界にしてもいいな♪
それだったら労働も増えるし、不景気も終わる. . .タブン. . .おそらく
その第一歩して世界滅亡を目論むのも手かとww
雲銀 |  2006.07.24(月) 18:48 | URL |  【編集】
●建築業とかじゃね(笑)
というか、不景気でなくても恒常的に仕事が足りない状況になる、と。立岩さんはそういってます。本当かと言われても正直わかりませんが(汗)
機械化もあるし、そもそも人が使うものって有限だからねえ。

>それだったらいっそのこと世の中をもっとアナログな世界にしてもいいな♪
それなんてラッダイト運動?
深海魚 |  2006.07.24(月) 22:11 | URL |  【編集】

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