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2006年02月23日(木)

麻原被告は「訴訟能力あり」~素人の素朴な疑問 

ニュース・社会を謂いたい放題!栄えある(?)第2回は麻原(本名・松本智津夫)被告に精神鑑定が実施され、「訴訟能力あり」との判断がなされた件を取り上げたいと思います。
本当は「アカルイセーキョーイク」をやろうかとも思ったんですが、こちらの方が緊急性が高いので。それでもだいぶ乗り遅れましたがね。

方針としては、新聞記事や公開されているほかのブログの方のご意見を参考にしながら「今回の手続きへの疑問」「精神障害を理由とした刑の免除・軽減、公判停止」「被害者の人権・心情って?」あたりをざっくりと論じてみようかなと考えています。「被害者の心情を考えると早く極刑に処すべき」的な意見は私なんかがわざわざ言わなくても耳タコなので、今回はあえて別の側面から。

ちなみにコチラでさまざまなブログの意見がまとめられています。

それじゃ、いってみましょうか。緑字は引用です。強調は深海魚が勝手にしています。

【More・・・】

まずは疑問点を挙げてみよう
報道を見る限りは、軽度の拘禁反応による異常行動は見られるけれども訴訟能力までは失われていないという判断とのこと。

オウム事件、松本被告に訴訟能力…医師が鑑定書提出 ―読売新聞
>松本被告の弁護人によると、松本被告は面会の際、質問に反応せず、意思表示もしていない。しかし、東京拘置所の記録などによると、拘置所の日常生活に大きな支障は生じていないという。
・・・あれ?これと相反する報告を読んだことがあるんだけれど。うろ覚えだったので、探してみました。
有田芳生氏の酔醒漫録、05年10月後半分より
>いま被告人はどんな状態にあるのか。弁護人と拘置所によると、排泄は自分で行うことが出来ないのでオムツをしている。松井弁護士が接見したときも、失禁し、漏れた尿がポトポトと床に落ちたそうだ。運動時間には係官が脇を抱えて外に出し、食事は箸ではなくレンゲを使い、衣服の着脱も手伝うような情況だという。
全面的な介護が必要な状態であることは、拘置所側も認めていたはずです。これで日常生活に大きな支障は出ていないって、意識あって自発呼吸してりゃ支障なしかい。

オウム松本被告「訴訟能力ある」 精神鑑定結果を提出 ―朝日新聞
>鑑定は「被告人は現在、拘禁反応の状態だが、拘禁精神病の水準にはなく、偽(ぎ)痴呆(ちほう)性の無言状態にある。被告人は物を言わないが、物を言う能力が失われたことを示唆する証拠はない。コミュニケーションする能力があることは、様々な方法で証明されている」とした。そして、「発病前からの無罪願望が継続していると考えられる。被告人は、訴訟を進めることを望んでいないが、訴訟をする能力は失っていない」と結論づけた。
ええと、これを読んで私を含めた一般市民がまず思うのは、おそらく「偽痴呆」ってなによってことでしょう。というわけで調べてみました。
偽痴呆症・・・痴呆の原因となるような器質性疾患がないのに痴呆症状を示す状態。うつ病や意識障害などが原因となることが多い。別名仮性痴呆。
この場合無罪願望が根底にあって拘禁反応を起こしているので、ヒステリーみたいなものでしょうか。なんだかあいまいですね。

・そして、気になったのがコチラ→Kawakita on the Webサマの2月20日の記事
>裁判所は

・2004年6月、「この裁判(控訴審)は2年で終わらせる」と弁護側に発言。
・2004年12月、東京高裁裁判官2名が書記官とともに被告人に面会しており、被告は裁判官の質問を理解している、との旨を弁護側に伝えている。
・2005年8月、精神鑑定を行う前から「訴訟能力を有するとの判断は揺るがない」との旨を弁護側に伝えている(東京高裁の鑑定医の選定が2005年9月)。

この記述と先ほどの「日常生活に大きな支障は生じていない」の矛盾点をあわせて考えると、先に麻原の訴訟能力ありと結論を出すことは決まっていて、それを裏付けるために鑑定を利用したように取られてしまっても仕方ないのではないでしょうか。

そもそも、精神の状態で責任・訴訟能力を決めるのってどうなのよ?
この鑑定の正当性云々の前に、訴訟能力の有無を理由に裁判自体が中断され、結果として麻原が罰されない可能性が出ることが許せないという方も当然いますね。
あ、その前に基本の大前提を確認しておこう。今回問われているのは事件当時の責任能力ではない。たとえ公判停止になったとしても、治療を受けて回復すれば裁判は再開されます。有無を言わせず無罪になったりはしません。

この場合問題なのは、精神障害によって責任能力や訴訟能力がないと判断することの妥当性でしょう。
・刑法>(心神喪失及び心神耗弱)
第39条 心神喪失者の行為は、罰しない。
2 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

・刑事訴訟法>第314条 被告人が心神喪失の状態に在るときは、検察官及び弁護人の意見を聴き、決定で、その状態の続いている間公判手続を停止しなければならない。但し、無罪、免訴、刑の免除又は公訴棄却の裁判をすべきことが明らかな場合には、被告人の出頭を待たないで、直ちにその裁判をすることができる。
このうち前者のほうにはいろいろ批判が寄せられています。犯罪者が罰せられないことに対する感情的な反発もあれば、精神障害者が一人前の人間として扱われていない、犯罪者予備軍として危険視されているという批判もある。あるいは、責任能力なしとされて措置入院させられ、結果として受刑するよりも長い間社会から隔離される人々の存在などという問題も取りざたされます。精神鑑定自体が無意味だとする考えもあります。
これに対して、今回問題になっている後者の規定に対する批判は、深海魚はいままで耳にしたことがありません。刑法のほうと混同されているのかな。今回の裁判によって、議論が巻き起こるかもしれませんね。

深海魚自身は安易な厳罰化はよくないんじゃないかなーと思う人間ですが、この2法に寄せられた、またはこれから寄せられる批判の中には耳を傾けるべきものも多くあることでしょう。今後の状況によっては法改正が必要となるかもしれません。
逆にいえば、法律の問題は法改正によって対処すべきです。1人の被告に対して恣意的な法運用を行うことによって対応すると言うのは根本的には何の解決にもなっていないばかりか、法治主義の放棄でさえあります。

被害者の人権、感情って?
・被害者の人権
まず確認しておきたいのは、被害者の人権と加害者の人権は必ずしも互いに対立するものではないと言うことです。たとえば報道による被害者へのプライバシー侵害の防止、心身に受けた傷のケアへの援助、犯罪被害補償金の充実などはどれも被害者やその遺族の人権を守るための取り組みですが、これらは何の問題もなく容疑者や被告の権利を守る活動と両立させることが出来ます。

それでは、この裁判の場合どういった点で加害者と被害者の権利が衝突するのでしょうか。
ひとつ考えられるのは、鑑定手続きや公判停止による裁判の長期化です。これは本来被害者だけでなく加害者に対しても負担となりうるのですが(それだけ長い期間拘留されるわけですから)、今回は麻原被告の利益のために弁護側が鑑定と公判停止を要求しているので、被告側の負担は考えないものとします。
ええと、素人考えでごめんなさいね。裁判の長期化で問題になるのは裁判の進行や判決に直接かかわらないような些細な部分を繰り返し質問するなどして「無意味に」公判を引き伸ばす行為だと思うのですが。麻原被告の場合は訴訟能力の有無が大きな争点となっていますので、そこで慎重な審理を行うことは当たり前であって、非難されるべき点はどこにもないと私には思えるのね。

そうすると、少なくとも公正な精神鑑定とそれに基づいた対応を取ることは被害者や遺族の人権を何ら侵害しないと考えることができます。

・被害者の感情
これは被害者の人権とは分けて考えましょう。
何か事件が起こったときに被害者の感情が取り上げられるのはたいてい「被害者の感情を考えれば厳罰に処すべき」という形ですね。深海魚は被害者でも遺族でもないのでお気持ちを完全に察することは出来ませんが、心身に傷を負ったり愛する人を亡くしたりする悲しみは、なんとなく想像することができます。けれど、これも想像にすぎませんが、同時に「まだ解明されていない事件の容貌や動機を被告に明かして欲しい」という思いもあるのではないでしょうか。もし麻原被告の無言状態が詐病でなかった場合、適切な治療が施されなければ後者の思いは永遠にかなわないものとなってしまいます。
そしてもうひとつ大切なのは、第三者の想像する「被害者の気持ち」が本当に被害者の心情と一致するとは限らないということです。私たちは想像することしか出来ない以上、安易に「被害者の心情」を持ち出すべきではありません。(あ、もちろん被害者や直接彼らの意思を確かめることのできる人は別です)
厳罰を求める意見はあって当然ですが、直接の関係者でない限り被害者の気持ちを理由にして終わるのではなく、自分の言葉で語って欲しいです。

まとめてみよう
かなりまとまりがないけれど、無理やり終わらせます。ついてきてねっ。

今回の精神鑑定のやり方には、素人目に見ても「最初に結論があって、それに鑑定結果を合わせたんじゃないの」と疑問を抱かせる点があります。
地下鉄サリンをはじめとする一連の事件は確かに社会を揺るがすほど凶悪で、許すことの出来ない犯罪です。しかし、司法はあくまで麻原を松本智津夫という一被告として扱い、世論に流されずに法を厳正に適用して裁きを下すべきです。
麻原被告に訴訟能力があると判断するのはかまいませんが、これだけ議論を呼んでいるのですから、司法や鑑定の信頼性を損なわないためにも今回の手続きが正当で適法だったのならそのことを国民にきちんと説明して欲しいと思います。

・・・こんなもんかな。
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Comment

はじめまして。kawakitaともうします。TBありがとうございました。貴エントリーの内容に賛同いたします。別エントリーですが、私が聞いてきた公開討論会のレポのエントリーをTBさせていただきました。
kawakita |  2006.03.01(水) 12:33 | URL |  【編集】
はじめまして。
こちらこそ、ご挨拶なしで突然TBさせていただいたのに、コメントとTBどうもありがとうございます。
深海魚 |  2006.03.01(水) 23:57 | URL |  【編集】

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